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物語をさがして

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【ライター】ニシハマカオリ 愛知県日進市在住。小学校教諭を経て現在はイラストレーター・絵本作家として活躍中。地域に伝わる物語を紐解いたり、書き手や出版社にインタビューしたり、物語… もっと読む
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#アート

どうした?家康 〜小牧・長久手の戦いの分岐点「岩崎城」に思いを馳せる

物語をさがして vol.24 木魚がえると岩崎城梅雨の時期、岩崎城近くの雑木林から、 雨に打たれる竹などの樹木の音に混じって 「ろくろくろくろくろくろく坊 なむあみだ ぽこぽこぽこぽこ なむあみだ」 こんなリズムが聞こえてくる それを地元の人たちが「木魚がえる」と呼んだ そんな言い伝えがあります。 「ろくろく坊」とは不思議な音色です。 岩崎城の傍の六坊山のことでしょうか。 なぜ、供養の読経や木魚の音を思わせる声が聞こえという話が伝わるのでしょうか。 それは、ここ岩

あたらしい機織池(はたおりいけ)伝説

物語をさがして vol.23 2023年になりました。新しい年になりましたが、私は今日も古い物語の本をめくっております。そして、ふと気づいたことがあります。 この辺りに伝わるお話に「機織池」「機織石」など、機織りに関連するお話がしばしば見られます。おそらく、全国各地にもあるのではないでしょうか。 布を生産する自動式の織機が生まれる前、「機織り」は家の中での主に女性の手による大切な仕事だったと思います。どのお話にもよく働く女性が出てきます。 ところが、そんな機織りの話は

摩伽神さんと龍の石庭

物語をさがして vol.19 摩伽神さん。 まかじんさん、と読みます。 なんとなく、印象に残るふしぎな響きです。 どんな意味があるのかは分かりません。 「摩伽(まか)」の響きは般若心経の「摩訶波羅蜜多」(まーかーはーらーみーたー)を連想させます。 もしも仏教の言葉から由来しているのなら、「マカ(摩訶)」は大きいこと、優れていること、偉大なことを意味するのですから、「摩伽神」は「とても偉大な神様」といったことが示されているのかもしれません。 愛知県みよし市の福谷(うきが

絵本出版工房をたずねて ~絵本づくり体験レポート~

物語をさがして vol.18 出版社の人間がスキルゼロから本気で絵本を作ってみた ある日、ポストにこんなDMが届きました。 三恵社は名古屋に本社のある、今年で創業53年の出版社。東京にも事業所があります。 一般書籍やテキストの刊行を行うほか、絵本出版工房もあり、少部数からの絵本出版企画でクリエーターを支援・輩出したり、企業向けの絵本制作を通じてPRやメッセージを伝えたりとあたたかくユニークな事業を展開されています。 私も絵本『おつきみどろぼう』『ゆうやけどろぼう』の出

2022お月見どろぼうウォッチ

物語をさがして vol.17 こんにちは。10月になり、いっそう秋が深まってきたようです。 9月の記事(vol.15 お月見どろぼうが来た!)では、住んでいる地域に伝わる「お月見どろぼう」の風習をご紹介いたしました。 今回は、中秋の名月の日に、「お月見どろぼう」の様子を見て回ってきましたので、その様子をお伝えします。 今年、2022年の中秋の名月は9月10日土曜日。 この地域は運よく晴れました。 「お月見どろぼう」は中秋の名月の日に行われます。一般に月がきれいな時期な

お月見どろぼうが来た!

物語をさがして vol.15 こんにちは。あんなに暑かったのがうそのような、秋の気配です。 そしてまたこの月のきれいな季節が巡ってきました。 みなさんは「お月見どろぼう」をご存じですか? 私は今の住居(愛知県日進市)に引っ越してくるまでは知りませんでした。 私とお月見どろぼうの出会いをまんがに描いてみたのでぜひご覧ください。 「お月見どろぼうが来た!」~お月見どろぼうとの出会い~これが、私とお月見どろぼうの出会いです。この子供たちの様子がかわいくておもしろくて、それ

家康の腰かけた石をたずねて

物語をさがして vol.14 こんにちは。暑い毎日ですがお元気でお過ごしでしょうか。 第11回の記事では猪の形をした石を探しに行きました。 今回も石にまつわるお話です。 長久手ふるさとかるた 長久手市にある長久手古戦場公園(愛知県長久手市武蔵塚204)は、よく子連れで訪れた思い出の場所です。パンや飲み物やおやつを携えて近場のこの公園で子どもを遊ばせ、遠出をしなくてもピクニック気分を味わいました。 公園横にはまだショッピングモールが建っていなかったので、周囲は野原が広が

よりきみ⇔かおりのちょろちょろ交換日記 その2

物語をさがして vol.13 こんにちは、イラストレーターのニシハマカオリ(にしはまかおり)です。 先回の記事では、 「よりきみ⇔かおりのちょろちょろ交換日記」 略して 「ちょろ日」 と題して、 ぬいぐるみ作家&イラストレーターの「よりどりきみどり」さんに、お手紙の交換を通して、制作のあれこれを伺ってきました。 ここまでは、よりきみさんが始められたイラスト企画「ちょろり画」や「おにぎり記録帳」のことを語っていただきましたが、続いては、ぬいぐるみ制作についてお話を聞いて

よりきみ⇔かおりのちょろちょろ交換日記

物語をさがして vol.12 こんにちは、イラストレーターのニシハマカオリ(にしはまかおり)です。 かわいいキャラクターが、ぽつぽつとお話を始めて、思わず耳を傾けてしまう… 今日は、そんな心温まる制作をされている、ぬいぐるみ作家&イラストレーターの「よりどりきみどり」さんをご紹介します。 よりどりきみどりさん(略して、よりきみさん)は愛知県在住。同じ地域で活動しているので、私もイベント展示でご一緒することがあったり、「チームにゃごや(名古屋)」と称して近隣メンバーで集まっ

石の話~ふたつの猪子石(いのこいし)

物語をさがして vol.11 子どもの頃、住んでいたマンションの駐車場の脇に、細長い植栽スペースがあり、ツバキやヤマモモなどの庭木が植えられていました。私はそこを日中の遊び場にしており、ツバキの花のつぼみを取っては固く閉じたまだ白い花びらを一枚一枚はがして中身を観察したり、ダンゴムシやカタツムリの採集を試みたりと飽きることなく遊んでいたことを覚えています。 駐車場のコンクリートと植込みの間の境目は、石で区切られており、成形したコンクリート石だけではなく、少しだけ庭園風に、

くすとじぞうときつね

物語をさがして vol.10 以前の取材(vol.08田島征三アートの冒険展へ)で刈谷市美術館へ向かう途中、県道57号線を通って豊明市に入ったところで、懐かしい風景に出会いました。豊明消防署向いに広がる田んぼの中にどんと生えている一本のクスノキ。 学生の頃にこの近くに住んでいたので、家庭教師のアルバイトに行く途中、スクーターでこの横をしょっちゅう通り過ぎていました。あれからもう30年近く経っているというのに、ぜんぜん変わらないこの風景にびっくり。近くにドライブスルーのカフ

長久手 ”腕から上“ツアー

物語をさがして vol.09 近頃、パソコンやスマートフォンを操作する時間が長いせいか、目の疲れや肩こりを感じることが多いです。いや、年齢のせいかもしれないのですが。 適度な運動や睡眠、食生活が大事なことは承知していますが、なかなかそういった地道なアクションが追い付かないこともしばしば。 あまりあくせく生きずに温泉でゆったり湯治なんかができると最高ですよね。 そんなふうに慢性的に肩こり症の私ですが、1961年刊行の『愛知県伝説集』福田祥男(名古屋泰文堂)の中に、興味深

田島征三 アートのぼうけん展 へ

物語をさがして vol.08 新緑もすっかり色濃くなって定着し、初夏を感じる今日この頃です。みなさまはお元気でしょうか。私は、先日面白そうな美術展をやっていることを知り、学生時代に過ごした愛知県刈谷市にある刈谷市美術館(刈谷市住吉町4丁目5番地)を久々に訪れることにしました。 「田島征三 アートのぼうけん展」って? 私は、あの迫力ある昔話の原画をぜひこの目で見てみたいなあというのと、きむらゆういちさん原作の、おおかみの絵本が好きなので、原画が見られたらいいなあと期待を抱い

オンライン展示「イラスタポロン」の話

物語をさがして vol.07 前回の記事では、岐阜県在住のイラストレーター 森のくじらさんに、イラストレーターになった経緯や制作についてのお話を伺いました。 私は大活躍のくじらさんへのインタビューでゲンキンにも「イラストレーターを続けていくための秘訣」などを探ろうとしました。分かってはいましたがそんなに簡単に「秘訣」など見つからないもの。 くじらさんは「これはこうすべきだ」とは絶対に言いきることをしません。 インタビューで、制作の秘訣のようなものについて、こう話していま