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物語をさがして

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【ライター】ニシハマカオリ 愛知県日進市在住。小学校教諭を経て現在はイラストレーター・絵本作家として活躍中。地域に伝わる物語を紐解いたり、書き手や出版社にインタビューしたり、物語… もっと読む
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記事一覧

おっぱいの願い~「乳花薬師」(ちばなやくし)をたずねて~

物語をさがして vol.28 こんにちは。昔話をたどっていると、ご利益のある神様や仏様が近くにいらっしゃることがわかって会いに行きたくなることがあります。 今回は、名古屋の「乳花薬師」(ちばなやくし)と呼ばれて信仰を集めている薬師様についてのお話です。 薬師様、薬師如来(やくしにょらい)とはよく耳にする信仰の対象ですが、いったいどんなご利益のある仏様なのでしょうか。 阿弥陀如来(あみだにょらい)が死後の安らぎ、極楽浄土を与えてくれるのに対し、薬師如来は、現世での願いを

椿の森の河童伝説

物語をさがして vol.27 こんにちは。少し前まではお花見だ新学期だなどと思っていたのが、あっという間に初夏の日差しを感じられるようになり、水田や川の水もきらきらと輝いて見えます。川というと、名古屋に河童伝説があるのをご存じですか? 今回は、河童の伝説についてのお話です。 椿の森の河童『尾張名所図会』によると老人は名古屋城巾下門の西に隠居していた「河合小伝治」という武士であったとあります。伝承ではこうして住所や氏名がそれらしく語られることがありますが、何かリアリティがあ

出会いの春に訪れたい。ご縁結びの木「連理木(れんりぼく)」

物語をさがして vol.26 こんにちは。あたたかな陽気に春のきざしを感じられるようになりました。進級や進学、異動やそれにともなう転居などで、新生活が始まる方も多いのではないでしょうか。 わたし自身は個人事業主なので、異動はありませんが、一緒にお仕事をしているパートナーやクライアントさんの顔触れが年度で変わることも多く、この季節は新たな出会いの時期でもあります。 そういったわけで、今回は良縁を願い、 新しい出会いや縁結びや恋の願いにまつわる場所についてのレポートです。

山城の石をたずねて ~徳川ゆかりの城 大給(おぎゅう)城址へ~

物語をさがして vol.25 こんにちは。ニシハマカオリです。 またの名を、石が大好き、イシハマカオリです。 磨かれたり光ったりしていなくて、大き目のが好みです。 これまでには、豊田市の鶏石(鶏の声がしたという石)、名東区の猪子石(猪の形の石)、長久手市の床几石(家康が腰かけたと伝わる石)、など、ユニークな石を訪ねてきました。 すると、記事を読んでくださった知人が 「豊田市大内町の、大給(おぎゅう)城址の巨石もぜひ訪れてみて」 と薦めてくれました。 面白そうです! 大給

どうした?家康 〜小牧・長久手の戦いの分岐点「岩崎城」に思いを馳せる

物語をさがして vol.24 木魚がえると岩崎城梅雨の時期、岩崎城近くの雑木林から、 雨に打たれる竹などの樹木の音に混じって 「ろくろくろくろくろくろく坊 なむあみだ ぽこぽこぽこぽこ なむあみだ」 こんなリズムが聞こえてくる それを地元の人たちが「木魚がえる」と呼んだ そんな言い伝えがあります。 「ろくろく坊」とは不思議な音色です。 岩崎城の傍の六坊山のことでしょうか。 なぜ、供養の読経や木魚の音を思わせる声が聞こえという話が伝わるのでしょうか。 それは、ここ岩

あたらしい機織池(はたおりいけ)伝説

物語をさがして vol.23 2023年になりました。新しい年になりましたが、私は今日も古い物語の本をめくっております。そして、ふと気づいたことがあります。 この辺りに伝わるお話に「機織池」「機織石」など、機織りに関連するお話がしばしば見られます。おそらく、全国各地にもあるのではないでしょうか。 布を生産する自動式の織機が生まれる前、「機織り」は家の中での主に女性の手による大切な仕事だったと思います。どのお話にもよく働く女性が出てきます。 ところが、そんな機織りの話は

にっしんのきつねのおはなし

物語をさがして vol.22 私が住んでいる愛知県日進市は名古屋市のお隣に位置しますが、東には東部丘陵が広がり、まだ自然も多く残されています。 我が家の近所の草むらや林ではキジやイタチのような野生動物を見かけることがあります。イノシシ出没の情報も回覧やメールで時折流れてきます。小学校ではタヌキやアライグマの目撃情報もあったそうです! 高校生の息子は、家への帰り道に、時々同じ場所でキツネに会うことがあるのだといいます。山や雑木林、田畑の近くだということなのですが、私は見か

くすのきさん

物語をさがして vol.21 見知らぬ場所に行って、枝ぶりのよい樹木やスケールの大きな巨木を見るとなぜかわかりませんが「おお!」と感動し、写真を撮りたくなってしまいます。樹齢は何年だろう、どんな景色を見てきたんだろう、いろいろと想像をかきたてられ、畏敬の念さえ感じてしまいます。 そんな大木は、神社や大きな公園によくみられるものという印象がありますが、名古屋の街中にも、推定樹齢千年と言われる木があるそうなんです。 今日は、松原緑地の大きなクスノキ(愛知県名古屋市中区松原1

猫ケ洞の鬼婆伝説

物語をさがして vol.20 名古屋市千種区に「平和公園」という大きな霊園のある緑地公園があります。とても大きいので一部は名東区にも接しています。 息子の通っていた高校では、平和公園のことを 「ピーパー」 と呼んでいました。 発音は、イントネーションを上げ下げせず、平たく読みます。 そしてしばしば、 「ピーパーに集合」して、 運動部のランニングや自主練を行っていました。 名称の由来は 平和(ピース)+公園(パーク)=ピーパー ということなのでしょう。 ピースフ

摩伽神さんと龍の石庭

物語をさがして vol.19 摩伽神さん。 まかじんさん、と読みます。 なんとなく、印象に残るふしぎな響きです。 どんな意味があるのかは分かりません。 「摩伽(まか)」の響きは般若心経の「摩訶波羅蜜多」(まーかーはーらーみーたー)を連想させます。 もしも仏教の言葉から由来しているのなら、「マカ(摩訶)」は大きいこと、優れていること、偉大なことを意味するのですから、「摩伽神」は「とても偉大な神様」といったことが示されているのかもしれません。 愛知県みよし市の福谷(うきが

絵本出版工房をたずねて ~絵本づくり体験レポート~

物語をさがして vol.18 出版社の人間がスキルゼロから本気で絵本を作ってみた ある日、ポストにこんなDMが届きました。 三恵社は名古屋に本社のある、今年で創業53年の出版社。東京にも事業所があります。 一般書籍やテキストの刊行を行うほか、絵本出版工房もあり、少部数からの絵本出版企画でクリエーターを支援・輩出したり、企業向けの絵本制作を通じてPRやメッセージを伝えたりとあたたかくユニークな事業を展開されています。 私も絵本『おつきみどろぼう』『ゆうやけどろぼう』の出

2022お月見どろぼうウォッチ

物語をさがして vol.17 こんにちは。10月になり、いっそう秋が深まってきたようです。 9月の記事(vol.15 お月見どろぼうが来た!)では、住んでいる地域に伝わる「お月見どろぼう」の風習をご紹介いたしました。 今回は、中秋の名月の日に、「お月見どろぼう」の様子を見て回ってきましたので、その様子をお伝えします。 今年、2022年の中秋の名月は9月10日土曜日。 この地域は運よく晴れました。 「お月見どろぼう」は中秋の名月の日に行われます。一般に月がきれいな時期な

ニワトリ石の声をもとめて

物語をさがして vol.16 物語の題材を求めて昔話を読むと「石」をモチーフにした話が実に多い。これまでに取り上げた近くの石は「猪の姿の猪子石」「長久手の床机石」・・・ 気になりだしたら今度は石の話を探し、石のことばかり考えているイシハマカオリです。 そういえば小学校の頃、同級生にイシハマさんがいたっけ。発音がよく似ているのでよく聞き違えられましたが、あの歌の上手だったイシハマさんはお元気でしょうか。と、意識があちこち飛び石状態ですが、今日は豊田の田籾町に「鶏石」なる石

お月見どろぼうが来た!

物語をさがして vol.15 こんにちは。あんなに暑かったのがうそのような、秋の気配です。 そしてまたこの月のきれいな季節が巡ってきました。 みなさんは「お月見どろぼう」をご存じですか? 私は今の住居(愛知県日進市)に引っ越してくるまでは知りませんでした。 私とお月見どろぼうの出会いをまんがに描いてみたのでぜひご覧ください。 「お月見どろぼうが来た!」~お月見どろぼうとの出会い~これが、私とお月見どろぼうの出会いです。この子供たちの様子がかわいくておもしろくて、それ