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サスティナブルをファッショナブルに 〜草木染めに染まる

伝統は今を生きる vol.20

こんにちは。フォトグラファーのたかつです。
ついに「伝統は今を生きる」の記事も20回目となりました。日頃ご覧いただいている皆様ありがとうございます。これからも「伝統」について知ってもらえる記事を発信していきますので、応援よろしくお願いいたします。

さて、記念すべき今回の記事は、伝統的な染色技法「草木染め」についてご紹介します。

近年は「サスティナブル社会の実現」というテーマが注目されていますが、この草木染めという伝統技法もサスティナブルの考えと親和性の高いものだと僕は思っています。


「草木染め」って?

「草木染め」はその名の通り、草木などの天然素材から作った染め液(天然染料)で糸や布などを染める技法のことを指します。代表的なものとして「藍染」「紅花染」「柿渋染」などが草木染めとしてあげられます。化学(合成)染料を使用していないため、環境に優しいのが特徴です。

また、草木染めは天然染料だけだと生地が染まりにくいので、金属成分を含んだ液体(媒染剤)につけることで色をより鮮やかにして定着させます。媒染剤にはミョウバン(アルミ)や鉄を使用することが一般的のようです。

そして草木染めの大きな特徴は、経年変化によって生地の色合いが変わるところです。使い込むほど味わいや渋みがでるので、長く愛用することで「育てる楽しみ」があります。


草木染めの歴史


草木染めの歴史は古く、中国では紀元前3000年頃、ヨーロッパやインドでは紀元前2500年頃からその技法が使われていたようです。日本では紀元前1400年頃前の縄文時代から使われてきたとされており、その頃は植物や貝で染色していたのだとか。
草木染めは昔から高価なものとして取り引きされており、特に「紫色」の草木染めは貴重でした。冠位十二階において最高位とされるのが紫色というのは有名ですが、江戸時代では紫の草木染めは庶民には手が出ない憧れのものだったようです。


「現代の草木染め」を実践する木曽川染絨さんへ


いろいろと調べてみて、草木染めがどのようにつくられるか実際に見てみたいと思いました。今回は昔ながらの染色方法ではなく「現代の草木染め」を見学するために、岐阜県笠松町にある「木曽川染絨株式会社」を訪れました。

木曽川染絨さんは『笑顔のあるくらしのために』という合言葉を掲げ、地元で作られた素材を使って、四季折々の自然な色合いが魅力の『KISO TEXTILE』というテキスタイルブランドを開発されています。あくまで染色加工がメイン事業ですが、『kiso natural dye』というプロダクトブランドも展開するなど、自然や人にも優しいサスティナブルで多彩なものづくりを行っている企業です。

草木染めや木曽川染絨の取り組みについて、今回は、代表取締役の安藤さんにお話を伺いました。

木曽川染絨株式会社 代表取締役 安藤篤史さん

―――改めてではありますが、「草木染め」とはどのような染色技法ですか?

安藤:草木や自然由来の素材で染めたものを「草木染め」と言います。当社ではログウッド、ザクロ、桑の葉、丁子、柿渋、玉ねぎ、アカネ、ラックダイなどの素材を草木染めで使用しているんですよ。ただ、草木染めは化学染料と比べると染色時間が長く素材によって着色にばらつきが出ます。また水質によっても染まり具合が変わってきます。このように草木染めはとても難しい技法なのですが、当社が染色に使っている地元の地下水は草木染めと相性が良く、しっかりと色がのった染めを行えています。

―――草木染めの魅力としてはどのようなものがありますか?

安藤:当社の地下水は草木染めとの相性が良いのですが、やはり化学染料と比べると着色にばらつきが出てきます。逆を言えば「世界に一つだけの製品」を作れるのが草木染めの魅力だと考えています。天然染料は自然の植物から色素を排出するので、煮煎じたときの排水や染色後の排水が環境を傷付けることはありません。また、化学染料は扱い方によっては人的な被害を起こす可能性があり、天然染料を使うことは染色に携わる人々の健康を守るということにもつながるんです。

―――木曽川染絨さんのこだわりと今後の展望についてお聞かせください。

安藤:当社では「水の消費量を減らす」「水を汚さない」「CO2を出さない」ものづくりを心がけています。そのために、機械の燃料を石油からガスにし、最新の設備を導入して少ない水で染色し、排水濾過システムを経た綺麗な水を放流しています。これも全て『笑顔のある暮らしのために』。つまり人が幸せになってほしいという想いからです。製品開発にもその考えが反映されており、今後はシルクやカシミア、テンセルなどの生地に草木染めを施した部屋着やインナー商品の展開を予定しています。何かとストレスの多い現代において、当社の草木染め製品が少しでも多くの人を笑顔にできれば嬉しいですね。

―――安藤さんお忙しいなかありがとうございました!

お話しを伺ったあと、木曽川染絨さんで展開されているブランド「kiso  natural dye」を見せてもらいました。とても素敵な色合いで肌触りもよく、女性向けでしたが思わず欲しくなってしまいました。「kiso natural dye」は下記サイトからも購入することができます。
オンラインショップURL:https://kiso-online.shop/


また、8月17日(水)~8月23日(火)の期間中、ジェイアール名古屋タカシマヤさんにてポップアップストアーを出店されるそうです。是非とも現代の草木染めを実際に手に取ってご覧ください。


サスティナブルをファッショナブルに



現代の草木染めの現場を取材するうちに、草木染めは現代社会にとてもマッチした技法だと感じました。それは単に環境に配慮しているというだけでなく、優しい色合いがファッショナブルで、何かとストレスの多い時代を生きる僕たちに寄り添ってくれるような存在なのかもしれません。ファストファッションも便利ですが、ときにはちょっとお金を出して、質の良い気に入ったものを長く使う。こういうことが当たり前に感じられる時代になることを心から願います。


木曽川染絨株式会社http://kiso-textile.co.jp/company/



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