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「クリエイターインタビュー:子どもの楽しい未来を描く絵本作家 ニシハマカオリさん」 子どもとアートと vol.07

「わあ、かわいい!」
到着するなり、つい言葉が出てしまった、この表札。

今回のインタビューは、愛知県日進市在住のイラストレーター&絵本作家のニシハマカオリさんにお話を伺います。
ニシハマカオリさんは日進市の地元の風習を紹介した『おつきみどろぼう』(三恵社)などの絵本をはじめ、書籍のイラストレーションや挿絵など、数多くの作品を手がけていらっしゃいます。
SNSのお写真でも拝見してずっと憧れだったご自宅兼アトリエに、このたびお邪魔させていただきました!

ニシハマカオリさんの手がけた絵本や書籍の1部

カオリさんとの出会いは約10年前。5回目の記事でインタビューした切り絵作家ゆまあひmakiさんが声をかけてくださったグループ展にまで遡ります。
元教員という共通点もあり、いろいろと相談に乗ってくださった先輩のおひとりです。

プライベートでは、大学3年生のお子さんを筆頭に、高3、高1、中1と、なんと4児の母。

1人育てるので既にいっぱいいっぱいなわたしとしては、お子さんを複数人育てながら、かつ、ご自分の夢や目標に向かっても着実に進んでいらっしゃるカオリさんが、一体どんな変遷を歩んでこられたのか、そしてそのパワフルなエネルギーの源は何なのか、とっても気になるところ。
幼少期のお話から子育てのこと、制作のこと、いろいろお聞きしてきました。


小学校の先生からイラストレーターに転身


――よろしくお願いいたします。さっそくですが、カオリさんは小さい頃はどんなお子さんだったんですか?

ニシハマ:秘密基地を作ったり、お絵かきをしたり…昔から絵を描くのは好きでした。幼稚園の頃は、お絵かき教室にも通わせてもらっていました。親が褒めてくれたのも嬉しかった記憶があります。

――わたしも秘密基地作り、大好きでした…!カオリさんは確かご出身が徳島県で、大学進学の際に愛知県にいらっしゃったんですよね?

ニシハマ:芸術大学や美術大学に進むことは、お金がかかるからと親も反対で…早々に諦めました。ただ、県外には出たいなという思いがあって。県外なら私立はダメって言われていたので推薦枠を探して、当時推薦枠があった愛知教育大学に進学しました。
絵を描く以外では、文章を読んだり書いたりすることも好きだったので、国語科を専攻しました。

――それから名古屋市で教員採用試験に合格して、小学校教員として11年過ごされたんですよね。どういうきっかけがあってイラストレーターに転身されたのでしょうか?

ニシハマ:在職中に3人産んで、ちょうど一番上の子が小学1年生になる時に退職しました。学童保育も合う合わないがあるし、かといって実家も遠いし、どうしようかなと…
職場の理解はすごくあったのですが、どのみち大変な思いをするなら、自分の好きなことにチャレンジして大変なほうがいいかなと思いました。
やはり家族との時間を大切にしたかったですし、フリーランスの方が時間の融通がきくかなというのもあってイラストレーターに転身しました。

アトリエには部屋の至るところに飾られたお子さんの作品が。
紙版画で使った鳥さん。家族で演奏するギターと共に。

――どんなふうに家族と過ごしていきたいか、その中でどう働いていくか…トータルで考えて出された結論だったんですね。カオリさんは当初からデジタルイラストを手がけていらっしゃったと思うのですが、そうしたスキルはどこかで学ばれたのでしょうか?

ニシハマ:ずっと「いつかは絵を描くことを仕事に」と思っていて、就職1年目の時に出版社の通信講座に入会しました。忙しさで続けられなくてすぐに辞めてしまったんですが、その会報で名古屋でのサークル活動を見つけて名古屋で活躍するイラストレーターさんと出会うことができたのが転機になったんじゃないかと。名古屋のイラストレーターさんが隔週土曜日、ご自身の事務所でペインターなどのイラスト制作ソフトを無料で教えてくださったんです。
当時そのサークルに集まっていたメンバーの1人、安楽雅志さんは当時大学生だったのですが、今は人気の絵本作家・イラストレーターとして大活躍しているんですよ。

――安楽雅志さん!わたしも何度か色々な会でご一緒したことがあります。一度見たら忘れられない昭和イラストを手がける、素敵なクリエイターですね。まさかカオリさんともご縁があったとは…!


子育てとイラストレーターの両立


――カオリさんはご自身の置かれた環境の中で、できることを少しずつ、積み重ねてこられたことが分かりました。そして子育てしながら働く中で大変なことの1つは、時間のやりくりだと思うのですが、どういった心持ちでお仕事には取り組んでこられたんでしょうか?

ニシハマ:やっぱり出張とか、会合とか、そういうのに参加するのは諦めないといけない部分はありましたね。どうしても、フルタイムの夫より子育ての負担が大きくなる部分はあるので、ご飯は何を用意しておこう、とかありますし。保育園も迎えがあるから、3時までには帰ってこないといけないとか…今だと延長保育とか、いろいろと選択肢は増えているかなあとは思いますが、仕事は限られた時間に集中してやっていました。

あとフリーのイラストレーターの立場だと、お仕事を断ったら次に来る保証がないから、めいっぱい引き受けてしまって…どうしてもキャパオーバー気味にはなってくることがありました。一番忙しい時期は、夜子どもたちが寝静まってから仕事をしていましたが、やはり睡眠時間が減ると不機嫌になってしまうし、家族にも影響がある(笑)。今はもう、夜は早く寝るようにしています。
一番下の子が中学生になって、ようやく夕方も使える時間がだんだんと増えてきましたね。

――お子さんの成長に合わせて、柔軟な心と対応で、自分なりのペース配分を模索しながら、働き続けてこられたんですね。その道は決して平坦ではなかったと思うのですが、その大らかなお人柄の安心感に包まれて、お子さんたちもすくすく育っていらしたのだなあというのが、アトリエに飾られているたくさんの家族写真からも伝わってきて、思わず感動してしまいました。

では最後に、読者の方、特に子育てをしながら仕事をされている方々に応援のメッセージをぜひお願いします!

ニシハマ:子育てって何人でも大変で、例え1人でも手塩にかける分、プレッシャーも大きくなるんじゃないでしょうか。ただ、子どもたちもいずれ大きくなって、手が離れていきます。自分が「やりたい!」と思うことがあるのなら、その気持ちに蓋をせず、どうにか時間を確保して少しずつでも何かできたらいいですね。

――どうもありがとうございました!


ここまで働き方や子育てのスタンスなどをお聞きしてきましたが、次はカオリさん流の「絵本の作り方」について、少しだけコツを教えていただきました。

ニシハマカオリさん流 絵本の作り方

絵本『ゆうやけどろぼう』ができるまで

1.コンセプトを決める
日進市の風習『おつきみどろぼう』をベースにして、それを名古屋市まで範囲を広げて考えました。コンセプトは名古屋城をモチーフにした楽しい「探し絵本」。高校生の頃、ウォーリーの絵本にすごく感動した記憶が残っていて、自分でもそういうものを描きたいと思いました。

2.調べる
名古屋城の間取りや配置を調べたり、実際に見に行ったり。絵本とはいえリアリティを大事にしています。余談ですが、完成した絵本を河村市長に見てもらって、かなり喜んでもらえたのもいい思い出のひとつです。

3.ページ配分を考える
絵本のページ数は限られているので、どんな構成や構図、配置にしようか考えるのが一番難しいところです。わたしの場合はお話よりも先に「こんな絵が描きたい」と思い浮かべて、そこから構成を決めていく流れの方が多いかもしれません。

4.下描きのラフを鉛筆で描く
この写真は違う絵本の下描きなのですが、こんな感じで鉛筆で描いていきます。

実際に見たものの方が描きやすいから、実はこれうちのキッチンなんです。それに理想を追加したりしていますね。」

5.下描きをスキャンして、デジタルで着色!
もともとデジタルでしたが、10年くらい前からはアナログでも描き始めるようになりました。色鉛筆が好きな画材で、水彩絵の具や色鉛筆などさまざまな画材を組み合わせています。
子どもが小さい頃は、間違って食べちゃうと困るのでなかなか画材を広げられなかったのでデジタルイラストのほうが制作しやすかったですが、どちらも楽しいし現在は両方やっています。

6.完成!
いまも色々な絵本の構想があるので、それをどんどん出版していけるようこれからも頑張りたいと思います!


絵本づくりは、作家さんの今までの生き方や感じ方、考え方などが、全部表現されているように思います。
作家さんのバックグラウンドを知ると、作品の見方もまた広がるから、わたしは色々な作家さんのお話を聞いたり本を読んだりするのが大好きです。

カオリさんの描く絵は、いつも「人を楽しませよう」という気持ちに溢れていて、そこが素敵だなあと思っていたのですが、それはカオリさんご自身がきっと、ご家族との何気ない毎日の暮らしを、楽しいものにしようという心がけていらっしゃるからかもしれません。今回、改まって深掘りしてお話を聞いて、そんなふうに思いました。


7回に渡って担当してきました みたすくらすの連載記事。今までご覧くださったみなさま、どうもありがとうございました。実はわたしは一旦、お休みに入りまして、次回からはカオリさんにバトンタッチしてのお届けとなります!
カオリさんのクリエイションの世界、わたしもいち読者として、とっても楽しみです。引き続きどうぞみなさま、お楽しみくださいませ!



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