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文化をつくる“次世代の花屋” TAIYO FLOWER

花、暮らし、私 vol.16

よく晴れた初夏の一日。
今回訪れたのは、昨年夏、名古屋市北区にオープンした「TAIYO FLOWER」さんです。

実は、昨年のお店がオープンして早々、花つながりの知人からその存在を聞いていたのですが、仲間内でちょっとした話題になっていました。

『藤井商店の息子さんが開いた花屋』

このフレーズは、花市場に顔を出す人には「!」となる、ちょっとしたニュースでした。
というのも、私が勤めていた花市場は、小さな仲卸商店がいくつも集まってできています。
「藤井商店」と言えば、私も市場で顔を合わせてはご挨拶をするご夫婦のお店!

ちょっとした親近感を勝手に感じながらも、その息子さんが開いたお店がどんなお店なのかと訪店の機会を楽しみに伺っていたのです。

調べてみると、印象的なのれんの外観に、コーヒーやビールも楽しめる…一見、花屋とは思えないような面白そうなお店であることが判明。これは一度行ってみなければと今回取材をさせていただくことにしました。

TAIYO FLOWERは店主の藤井良介さんが、50年続く老舗花店を受け継ぐカタチで始められたお店です。

もともとはアパレル繊維商社で会社員として働いていた藤井さん。コロナ禍で打撃を受けた家業を救う為、インターネットを中心にお花の販売を行う小売業[ FUJII SYOTEN ]を立ち上げたことからお花の道へ。さらに、期間限定のポップアップストアとして出張販売を行い、直接お客様にお花を届ける活動を積み重ねて来た経験が、今のTAIYO FLOWERにつながったそうです。

TAIYO FLOWERに込めた思い
https://camp-fire.jp/projects/view/437269

今回はそんなTAIYO FLOWERのお店を楽しみつつ、店主の藤井さんにもお話を伺って来ました。


ここって花屋さん!? 洗練されたTAIYO FLOWERの空間


大きな暖簾が印象的な、花屋らしからぬ花屋さん。
入口からしてなんとも魅力的な雰囲気ですが、中に入ると、さらに楽しい空間が広がっていました。


床に描かれたカラフルなラインとお店のロゴ。その先にはたくさんのお花がディスプレイされています。馴染みのあるお花もある中で、あまり見かけないような品種もたくさん。中には農家さんのところへ直接脚を運んで仕入れるものもあるのだとか。

さらに奥に進むと、ドライフラワーが吊るされた印象的なエリアも。
ここにはクラウドファンディングで支援して下さった方のお名前が刻まれたプレートがかけられていました。細部まで気を抜かず、センスの溢れる空間でした。

店内各所に違った雰囲気のエリアが作られていて、どこを見ても楽しめます。

観葉植物やプランター・花瓶などが並ぶエリアにある棚を覗いてくと、なんと、苔玉になった多肉植物!他では見かけないアイテムにたくさん出会えるワクワク感を感じるお店でした。


何回でも訪れたい!花以外にも魅力がいっぱい


花屋らしからぬ花屋、TAIYO FLOWERの魅力は花だけにとどまりません。

ここではこだわりのフードやドリンクも楽しめてしまいます。
無農薬・無化学肥料のウガンダの豊かな自然で育てられたコーヒーに、厳選したスパイスをブレンドしたインド式本格チャイ。世界各国のクラフトビール。そして、ひとつひとつ手作りのこだわりソーセージを使用したホットドック!(※ホットドックは週末限定販売)

これまで、「花屋」に行く機会がなかった方にも気軽に来ていただけるように。より多くの方に花や緑を楽しんでいただきたい、という想いからこちらのサービスを始めたのだそう。

この日は平日のど真ん中で、なおかつ車で来てしまったので、クラフトビールとホットドックの組み合わせはまた次回への楽しみに。店主も大絶賛するホットドックは絶対に食べておきたいところです!


「老若男女、みんなが笑顔になる」お店に


「新しいスタイルの花屋」と称されることの多いTAIYO FLOWERさんですが、実はこの取材中にも、年齢問わずたくさんの方がご来店されていました。

SNSを通じて遠方から来られる方もいれば、馴染みの顔、というような若い方、…そして地域のおばあちゃんがふらっと立ち寄って花の名前を訪ねたりと、本当に幅広い方が来店しています。

50年続いたお店を引き継いだこともあり、これまでのお客様を大切にしながら、新しい世代の方々にもお店を利用していただけるよう普段から意識されているそうです。

一見すると共存が難しそうな世代の壁も、TAIYO FLOWERが大切にしている『花屋は単に花を売る場所ではなく、お客さんの生活の一部』という思いが結びつけているのかなと、藤井さんやスタッフさんの対応を見て感じました。


店主・藤井良介の魅力

お話しを伺っていると、とても爽やかな勢いを感じさせる店主の藤井さん。
繊維商社出身ということもあり、ファッションにもこだわりを感じられますが、お店のデザインも、これまでに培って来た感覚・センスを形にして出来上がったものだそう。自分の手でタイルを貼ったり、暖簾にロゴをシルクスクリーンで転写したり。とにかくやってみる、試してみる。というスタンスがポジティブなエネルギーを感じさせます。

――ご実家が花市場ということで、これまでに花にまつわるエピソードはありますか?

藤井:とにかく普段から花が身近にある生活でしたが、実家にいた当時は特に花に興味はなかったんです。父親が市場から帰ってきたら、「植物くさいな~」なんて思ってたくらいで(笑)。市場が忙しい時期にはたまに手伝いにも行っていましたね。

――そうなんですね!FUJII SYOTENの立ち上げがコロナ禍で打撃を受けた家業を救ったと伺っていますが、小売の経験があったのですか?

藤井:全然ありませんでした。ただあったのは、“経験がある・ないじゃなく、大変な時には必死になれば誰でもなんとかできる“ という考えでした。
とにかくやってみよう! 失敗しても怖くない!という思いで、自分の持てる知識や人脈でやれることを考えに考えて、できたのがFUJII SYOTENの今の形です。

最初は知識も少なかったですが、それがきっかけで、花の美しさや楽しさ、花を通して出会える人の素晴らしさを知っていきました。実際にお客様と対峙して話すことからも学びがあり、今では花に関わるこの仕事が本当に素晴らしいものだと実感しています。

――そこから今の店舗を譲り受けるまでになった訳ですが、異業種からの転身でもあり、地元でも歴史のある花屋さんを譲り受ける覚悟は相当なものだったのでは?

藤井:そうですね。異業種から、というところでいうと、“わからないことが当たり前”というスタンスは前職で身についていました。繊維商社では日頃から大きな額を伴う商談をしていたのですが、そういう時ほどトラブルはつきもの。でも、なんとかしなければいけない。どうしたら解決できるか、今ある状況で何ができるか、と考えるのが当たり前になっていたのでその経験が活きていると思います。

歴史を受け継ぐということに関しては、自分が始める前から愛されているお店であるので、
愛していただいている人たちの期待を裏切らないことが大前提です。でも、それだけではいつか先がなくなってしまいます。だからこそ、新しい文化をつくっていかなければならない。この想いから、『老若男女問わず、すべての人に花の彩りを届けたい』という、TAIYO FLOWERの経営理念ができました。でも、花屋らしい花屋はやらない。新しい花屋の文化を作っていきたいと考えています。

――最後に、TAIYO FLOWERにとっての“花の魅力“とはなんでしょう?

藤井:それについては、花の仕事に携わるようになって、ひたすらに考えました。

花って、嫌な気持ちになる人があまりいないですよね。もらっても悲しい気持ちになる人もいなければ、ときめく人が多い。それは男性でもそうです。

今の世の中って、本当にいろんな物に満ち溢れてますよね。
でも、花のように、贈ったりもらったり、その末路まで笑顔があるような物って、他にない気がするんです。結婚の時、葬儀のような最期の時にも、そばにあるもので、もらって嫌な気持ちにならない。そういう物って他になく、花独自の魅力です。その魅力を老若男女すべての人に届けたいと思っています。

藤井さんの言葉の節々から、お店の歴史やお客様への愛情と覚悟を感じました。そして、藤井さん自身、お花に魅了されていることも伝わってきました。
他業種から始まった経歴だからこその視点や堂々としたスタイルは、“これからの時代をつくっていく”という空気を感じさせます。

店内の随所にも、そんな藤井さんの想いが感じられるポイントがいくつもあり、探検してみたくなる作りになっています。


花屋だから何でもできる

インタビューでは、以前は花に興味がなかったと仰っていた藤井さんですが、今ではどっぷり花の魅力にはまっている様子が店舗の随所に見られました。

今朝仕入れたお花が、取材中に開いて初めて見せる表情を見せたとき。好きな花を写真に撮っているとき。子供のようにキラキラした目でお店の展望を語る姿はとても微笑ましく、こういうところも藤井さんの、そして花の魅力なのだなぁと、こちらまで嬉しくなってしまいます。

好きなもの、興味のあることはやってみる。取り入れてみる。
花屋で服が買えてもいいし、コーヒーやお酒を楽しめてもいい。
そんな藤井さんの、枠にとらわれない考えが活きているTAIYO FLOWER。

今後は、都心部にも店舗を構えて、より花に触れる機会を増やし、自分自身も新たな挑戦ができる場を作りたいと考えているそう。

“花屋だからこう“ではなく、花屋だからなんでもできる。そんな意識が根付く藤井さんが次に構えるお店もとても面白い空間になりそうですね!

TAIYO FLOWERはポップアップ出店や他業種店舗とのコラボショップなど、面白いイベントを随時開催されています!詳しくはHPやインスタグラムからご確認ください!

■TAIYO FLOWER
HP:https://www.taiyoflower878.com/
インスタグラム:https://www.instagram.com/taiyoflower878/
名鉄小牧線「味鋺駅」より徒歩10分



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