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モダンでおしゃれ!日本の履物をふだん使いに 

伝統は今を生きる vol.15

こんにちは。フォトグラファーのたかつです。

「おしゃれは足元から」とよく言いますよね。
みなさんはその選択肢に、下駄・草履・雪駄といった日本の伝統的な履物を入れていますでしょうか?

僕は仕事でファッションブランドを撮影することがあり実感しているのですが、ここ数年、日本の伝統的な履物の良さを見直そうというちょっとしたブームが起きています。アパレルブランドが伝統的な履物をアレンジしたシューズを発売したり、「雪駄×スニーカ」という意外な組み合わせの一足が生まれたりしているのです。

「日本の伝統的ないいもの」を暮らしに取り入れている僕としては、見過ごせないテーマです。今回の記事では「いまの暮らしに馴染む」日本の伝統的な履物についてレポートしてみたいと思います。

日本ならではの履物の歴史


下駄、草履、雪駄など、日本にはいろいろな履物があります。
これらのルーツについて、まずは簡単に調べてみました。

【下駄(げた)】
下駄は履物というより、もともとは「農具」という扱いだったそうです。今から約2000年前の弥生時代に稲作が始まり、農作業時の足の保護や沈み込みを防ぐために使われたものが下駄の原型になったと言われています。平安時代や奈良時代には地方の豪族が権威の象徴として履き、江戸時代は富裕層が雨天時の汚れを防ぐために使用していたのだとか。

【草履(ぞうり)】
奈良時代に中国から伝わった藁の履物が平安時代に草鞋(わらじ)となり、それを改良したものが草履と言われています。日本は古くから「家の中では靴を脱ぐ」という習慣があったため、脱ぎやすく履きやすい草履はすぐに広まることに。また、湿度の多い日本の気候ゆえに通気性の良い草履が人気となったとされています。

【雪駄(せった)】
雪駄の発案者には諸説あるのですが、茶人 千利休が発明したのではないかという話が有名です。千利休が冬に開催されたお茶会に参加すると、自身の履いていた下駄の歯の間に雪が挟まってしまい、大変歩きづらかったそうです。そこで、草履の底に牛革などを貼って補強したものが雪駄のルーツと言われています。


円頓寺商店街にある『はきものの野田仙』さんへ


今回、日本の履物を調査するにあたって、名古屋市の円頓寺商店街にある『はきものの野田仙』(以下:野田仙)さんにご協力いただきました。

名古屋で最も古い商店街のひとつでありながら、近年は若者にも人気の円頓寺商店街

野田仙さんは明治26年(1893年)に創業した、130年の歴史を持つ老舗履物店。円頓寺商店街においても2番目に長く営業を続けられていて、地元のみならず県外からもたくさんのお客さんが訪れるお店です。

老舗履物店とは思えないほどモダンな店構え
店内には伝統的な履物が美しく陳列されています


さっそく、野田仙5代目店主の高木麻里さんにお話しを伺いました。

——野田仙さんのように日本の伝統的な履物をメインにしたお店というのは、現在どのぐらいあるのでしょうか?

高木:「下駄、草履、雪駄」をメインに取り扱うお店は、名古屋市内ではもう数えるほどしか残っていないかもしれません。今はやはり洋装文化が中心なので、どうしても日本の履物を履かれる方が昔と比べると少なくなってしまって…。でも最近では伝統的なデザインが逆に新しいと感じてくださる方も増えて、これまでにない需要が増えているように感じています。

——下駄、草履、雪駄の違いについて教えてください。

高木:下駄は、みなさんご存じのように木製の土台に花緒がついている履物です。草履と雪駄の違いを説明するのは中々難しいのですが、分かりやすく言うのであれば、草履は女性向けの履物で、雪駄は男性向けの履物でしょうか。
ちなみに下駄は基本的にカジュアルな履物なんですが、草履と雪駄は色や素材によってはフォーマルな場でも履くことができます。例えば黒紋付の羽織袴には、畳表の雪駄か草履で、花緒は白無地と決まっています。また、花緒に金や銀が入っているものもフォーマル用としてお使いいただけるんですよ。

——伝統的な履物はどのように作られるのでしょうか?

高木:昔ながらの下駄、草履、雪駄などの履物は、すべて分業制で作られています。それぞれ専門の職人が土台や花緒などをパーツごとに制作し、それを組み合わせることで完成となります。すげ専門の職人もいて、当店の先代は腕のいいすげ職人でした。
最近は、様々な素材を使った現代的なデザインの草履や雪駄が増えてきましたが、一方で昔ながらの伝統的な履物を作れる専門の職人が少なくなっているのは寂しいですね。

店内に飾られている先代のポートレート

——現代のライフスタイルに昔ながらの履物を取り入れるコツはありますか?

高木:一番気軽なやり方として、ビーチサンダルと同じ感覚で取り入れていただくのが良いと思います。色や素材によっては、昔ながらの履物も意外とモード系やカジュアル系ファッションにも合うんです。
当店では、同じ商店街でオーダーメイド靴を手がける『Antico Ciabattino』さんとコラボした「靴職人が作る革の雪駄と草履」もご紹介しています。 革・中底・ソールを自由にカスタマイズし、野田仙の花緒から好きなものをセレクトできるという企画で、お気に入りのファッションに合わせて好みの雪駄や草履を作ることもできるんですよ。

また、下駄・雪駄・草履は夏のものと思われる方が多いかもしれませんが、冬場でも足袋や5本指ソックスと合わせて履けば、オールシーズン楽しんでいただけます。
あと、下駄・草履・雪駄をお買い求めいただく際には、少し小さめのサイズのものを選ばれることをオススメしています。「かかとが少し出るぐらい」が粋な履き方になりますので、ぜひ参考にしてみてください。

——今後は下駄や草履、雪駄のような履物をどのような方に使っていただきたいですか?

高木:以前にお客さまに、当店で50年以上前にご購入したという下駄を記念に寄贈いただいたことがありました。キレイに保管してあったせいか今でも現役で使える状態で、私もびっくりしたのを覚えています。お婆さまが使われていた草履をお孫さんがお持ちになって、手直しして履きたいという素敵なオーダーをいただいたこともあります。
丁寧に作られた日本の伝統的な履物は、大切に扱えば2〜3世代に渡って使うことができます。ぜひご自身のライフスタイルにあった履物を自由に選んで、楽しんでもらって、ずっと愛着を持って使っていただけたら嬉しいです。

お客さまに寄贈いただいた50年以上前の下駄

——ありがとうございました!


伝統的な履物は、ファッションに取り入れると逆に新しい


お話しを伺った後は、さっそく履物を購入してみたいと思います。
ネットショッピングと違い「試し履き」をさせてもらえるのが、実店舗の嬉しいところですね。履物はやっぱり買う前に履いてみたいですから。

野田仙さんには定番のものから、現代的なデザインのもの、さらには履き心地を追求した機能的なものまで様々なラインナップが揃っていました。悩みに悩み抜いたあげく…僕が選んだ一足はこちらです。

フォトグラファーの職業病か、やっぱり「黒」の雪駄を選んでしまいました。
黒ジャケット、オーバーシャツ、バールーンパンツと合わせてみましたが、まったく違和感ありませんね!むしろ新しいスタイルを見つけられて大満足です。今年の夏は軽快なモノクロルックが楽しめそう!

履き心地に関しては、人によっては少々慣れが必要かも。花緒の部分と足が擦れてしまうことがあるかもしれません。ただこれは足袋ソックスを履けば問題ないかと思われます。
そして慣れてしまえば、雪駄はとても愉快な履物です。
雪駄のかかと部分が地面と擦れるときに「シャリ、シャリ」と、なんとも子気味いい音が鳴ります。雪駄の音が足取りにリズムを与えてくれているように感じました。
僕は散歩をしながら仕事の企画を考えたりすることが多いので、今後とてもいい相棒になってくれそうです。個人的にかなり気に入ったので、今度は夏のお祭りに合わせて定番デザインの一足も追加購入したいと思います。

みなさまも日本の伝統的な履物を気軽に取り入れて、小粋な毎日を過ごしてみてはいかがでしょう?


■はきものの野田仙
https://ec.endojishotengai.com/shop/nodasen
〒451-0042 愛知県名古屋市西区那古野1丁目6−10
営業日時:火・水休み 11時〜19時
TEL:052-551-0197



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