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“俳句ことはじめ”は、俳句を「読む」ことから

俳句と暮らす vol.20

趣味で俳句を楽しんでいると、「俳句に少し興味があるんだけど、どう始めたらいいかわからなくて…」と相談されることがあります。

確かに、いきなり「一句詠んでみる!」というのは、少しハードルが高め。
そんな人には、「読んでみることから始めてみては?」とおすすめしています。


俳句の世界に触れるミュージアム

岐阜県大垣市に、「奥の細道むすびの地記念館」があります。
その名の通り、松尾芭蕉の紀行文『奥の細道』に関する資料を展示している、俳句のミュージアムです。

かつて川湊があったこの地は、松尾芭蕉が『奥の細道』のむすびの地として選んだ場所です。
元禄2年(1689)秋、松尾芭蕉は「蛤のふたみにわかれ行く秋ぞ」という句を詠んで、約5か月に渡った『奥の細道』の旅を終えました。

芭蕉がはじめて大垣を訪れたとされるのは『野ざらし紀行』の旅の途中、貞享元年(1684)9月下旬のこと。
以前から親交のあった船問屋の谷 木因(たに・ぼくいん)を訪ね、木因宅に1か月ほど滞在しました。その際、大垣の俳人たちが新たな門人になったといわれています。

芭蕉にとって大垣は、自分の俳風を受け入れてくれる親しい友人や門人たちがいる、思い入れの深いまちだったのかもしれません。

このミュージアム、もちろん有料ゾーンの展示も素晴らしいのですが、無料で入れる「情報・図書コーナー」がとても充実しています。

全国各地にある俳句結社の結社誌や俳誌がずらり!
(俳句結社とは、俳句作家の集団のことで、たいていの結社は会員の俳句を集めた出版物「結社誌」や「俳誌」を定期的に発行しています)

これだけの結社誌が読めるところも、かなり珍しいです。
このほか、俳句関連書籍なども自由に閲覧できます。

パラパラとめくりながら、好きな句を探すのも楽しいので、奥の細道むすびの地記念館に行ったときはぜひ、こちらの「情報・図書コーナー」もぜひ覗いてみてくださいね。


ネットプリントで気軽に俳句鑑賞デビュー!

「ちょっと俳句を読んでみたい」という人にぴったりなのが、今まさにvol.7となる秋分号を読むことができる「句具ネプリ」はいかがでしょうか。

私が運営している、俳句のための文具ブランド「句具」が主催している俳句アンソロジーで、年に4回、春分・夏至・秋分・冬至に発行し、発行日から1週間限定で配布・公開しています。


クリエイターの作品発表の場「ネットプリント」

「ネプリ」という言葉を初めて聞いた、という人もいるかもしれません。
「ネプリ」は略称で、「ネットプリント」「ネットワークプリント」のことを指します。(ネトプリ、ネップリなどと呼ぶ人もいます)

「ネットワークプリント」は、コンビニのプリンターで利用できるプリントサービスのことで、固有の「プリント予約番号」さえあれば、一枚白黒20円で、全国各地どこのコンビニからでも指定のデータを印刷することができます。

ビジネスで使ったことがある人もいるかもしれませんが、実は数年前から、同人誌などを筆頭にクリエイターの作品の発表・配布のツールとしてコンビニネットプリントが活用されています。
俳句や短歌など詩歌の世界でも、このネプリを使って作品を配布する新しい文化も育っていて、句具でも昨年春から年4回、二至二分に発行しています。
現在プリントできる最新号は、Vol.7になりました!


215人が投句してくれた「秋の句」がずらり!

句具ネプリに投句する句は、所属・経験不問、初めてつくる俳句でも大歓迎で、「秋の句」を一人一句、寄せていただいています。
本当に「はじめてつくりました!」と投句してくれる人も、毎回投句してくださる常連さんも、俳句結社の主宰をやられている、いわゆる先生(!)も。
初心者さんからベテランさんまで、たくさんの方の秋の俳句が並びます。

みなさんから投句いただいたすべての方の句を、投句順でずらりと掲載したものをデザインし、冊子状の紙面をつくっています。

今回は215人から215句が集まり、ボリューム満点の句具ネプリになりました。
A4サイズでプリントしたもの折って綴じると冊子状になります。


句具ネプリのもうひとつの楽しみは、SNSでの交流

コンビニプリントや無料ダウンロードで句具ネプリを入手してくださった方々は、俳句を鑑賞するだけでなく、#句具ネプリ のタグで、noteやTwitter、InstagramなどのSNSで好きな句について自由に発信してくださっています。

好きな句に、その句の作者と「#句具ネプリ」(出典元)を添えて呟くことで、作者と読者のゆるい交流になります。
見知らぬ人が自分の俳句を好きだと言ってくれたり、思いもよらない鑑賞をしていたりすると、とても嬉しいですし、新たな発見になります。

今回の句具ネプリ vol.7は9月23日に公開されたばかりですが、すでにTwitterには「#句具ネプリ」のタグにたくさんの感想が集まっています。
よかったら、そちらもぜひ覗いてみてくださいね。

俳句を「読む」ことからはじめてみませんか?

小説を読むのが好きな方が、みんな小説を書いているわけではないし、水彩画を見るのは好きだけど描いたことはない、という人も多いと思います。
もちろん俳句は五七五の短い詩なので、挑戦しやすい文芸ではありますが、いきなり作るのはなかなか難しいもの。
まずは「読んでみる」というのも、立派な一歩目です。

「俳句を、どう鑑賞していいかわからない」とも聞かれますが、鑑賞にルールもセオリーもありません。本当に自由。
特別な理由がなくても、「なんかいいな」とか「風景が浮かんできた」「リズムが好き」でもなんでもOKなので、その句の「いいところ」を見つけながら読むと、きっと楽しいと思います。

「俳句をはじめて読む」という人も、ネプリの俳句を眺めればきっと「この句、好きかも!」という一句に出会えるはず。
ぜひ、俳句鑑賞デビューに「句具ネプリ」手にとってみてくださいね。

コンビニプリント・無料ダウンロードなど、句具ネプリの入手方法などはこちらから。2022年9月30日(金)までの期間限定配布です。


暮らしの一句

月を待つカヌレにちょうどいいお皿 麻衣子

【季語解説】月(秋)
月は一年中見ることができますが、秋の季語。秋から冬にかけて空気が澄んで、月が明るく大きく照り渡るため、秋の季語とされています。
雪月花と言う通り、春の花、冬の雪と共に日本の四季を代表するもののひとつです。
「月」という季語の仲間に、「月待ち」という季語もあります。今回は、私が最新号の句具ネプリに投句した一句をご紹介しました。

句具ネプリ
URL:https://note.com/kugu/n/n54680df5c78f



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