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土地の記憶を、未来へ美味しく手渡す “文化のコーラ”

俳句と暮らす vol.19

シュワっと爽快で、今のように暑い時期に飲みたくなる「コーラ」。
炭酸の効いた「ソーダ水」や「サイダー」「クリームソーダ」などはすべて夏の季語ですが、「コーラ」を夏の季語としている歳時記もあります。

「コーラ」と聞くと、どんなイメージを思い浮かべますか。
きっと、みなさん思い浮かべる味はひとつ、あの味だと思います。
でも今、あの味じゃない、個性あふれる“クラフトコーラ”が、今各地で人気を集めているのはご存知でしょうか。

「コーラ大好き!」という人にも、「体に悪そうで…」とあまりに手に取らない人にも、ぜひ一度飲んでもらいたい、毎日でも飲みたくなるような岐阜生まれのクラフトコーラ「ぎふコーラ」を今日はご紹介します。
今回は、プロジェクトリーダーの片山治さんに、お話をお聞きしました。


無添加のクラフトコーラ「ぎふコーラ」

食の嗜好が多様化し、近年ではクラフトビールのように小規模で製造するドリンクが人気です。クラフトコーラもそのひとつ。
名前の由来となった「コーラナッツ」に、さまざまなスパイスを調合してつくられるのがコーラです。

コーラの歴史は長く、1800年代後半にアメリカで誕生しました。
その当時はスパイスやハーブから作られる「薬膳飲料」や「健康ドリンク」として親しまれていたという歴史があります。

ぎふコーラは、そんなコーラの原点に立ち返り、岐阜の「薬草」を積極的に取り入れた、オリジナルの配合のドリンク。
コーラの語源にもなっているコーラナッツや、ネーブルやライムといった柑橘系、さらにクローブやカルダモンなどのスパイス系もブレンドされていますが、一番の魅力はやはり「薬草」が配合されているということです。

薬草は、数ある中から「よもぎ」「かきどおし」「どくだみ」「ヤブニッケ」の4種類を調合。100%天然素材だけを使用した、完全無添加のクラフトコーラです。


さっそく一杯、新しいコーラ体験を

ぎふコーラのシロップは原液の濃縮タイプなので、いろいろな飲みものと割って楽しみます。
片山さんによると、炭酸はもちろんのこと、牛乳で割ったり、ウィスキーやラム、ジンなどで割るほか、スパイスが効いているので、ホットミルクで割ってチャイ風にするのもおすすめとのこと。原液のまま、料理にも活用できるそうです。

まずは一杯、たっぷりの氷をグラスに入れて、キンキンに冷えた炭酸水で割って、いただきます。

コーラと聞くと、どうしても真っ黒なイメージが浮かびますが、ぎふコーラはジンジャーエールを少し濃くしたような色のイメージ。
確かに、自然そのままの色ってこんな感じだなあ、と改めて感じます。

クイっと飲み始めると、爽快な炭酸の刺激と一緒に、スパイスが絡み合った複雑な香りと、優しい甘さが口の中に飛び込んできます。
でも、これが全く新しいスパイスドリンクというわけではなく、「確かに、コーラだ…!」という納得感もあり、不思議な体験。
甘ったるくなく、自然の甘みにほんのりスパイシーさが響きあった重層的な味わい。薬草の「苦い」「飲みにくい」といったイメージもほとんどありません。

でも、飲み終わったときの後味は、どこかスッキリ、爽やかなイメージ。
薬草やハーブに感じるような独特の清涼感が、コーラのさっぱりとした後味をしっかりと助けてくれていて、どんどん飲み進めたくなります。


薬草の宝庫、旧春日村の薬草文化

岐阜県の西濃エリア、現在の揖斐川町(旧春日村)は、薬草の村として知られています。

約400年前に、織田信長がポルトガル宣教師の教えにより伊吹山に薬草園を拓いたのがきっかけで、伊吹山やその周辺は「薬草の宝庫」として発展しました。

春日村に住む住民にとって、とても身近な薬草の存在。
家庭ごとにブレンドした「百草茶」として煎じて飲んだり、浴槽に薬草を浮かべて疲れを癒したりと、古くから日常生活に薬草文化が根付いてきた地域なのです。


春日村の薬草文化を、クラフトコーラへ

「ぎふコーラ」の生みの親は、この3人。
左から、四井智教さん(健食茶房「kitchen marco」店主)、泉野かおりさん(元揖斐川町地域おこし協力隊)、そして片山治さん(レストラン「Natural Base」店主)です。

3人とも、進学や就職を機に一度地元を離れましたが、いざ都会に出ると岐阜の知名度は思った以上に低く、「岐阜ってどこ?」と言われるたびに落胆していたそうです。
同時に、ずっと住んでいた場所なのに「これがおいしいよ!」「こんないいところがあるよ!」と即答できなかった自分がとてももどかしかった、といいます。
30才を目前に再び岐阜に戻り、地元の自然や文化に改めて気づき、「岐阜の魅力を、もっと伝えていきたい!」と動き出しました。

「岐阜の文化や特産を詰め込んだ、健康的な薬膳ドリンクとしてクラフトコーラを作り、たくさんの人に美味しく飲んでもらうことで、この地に根付く素晴らしい文化に気付いてもらうきっかけになったら」と片山さん。
そんな思いで、3人それぞれ本業を抱えながら、クラフトコーラのプロジェクトに携わってきました。


“コーラで岐阜を旅する”、次の行き先のお味は?

今、完成しているぎふコーラは、西濃地域の旧春日村の薬草文化をコーラにした一杯。

でも「これがゴールではなく、始まりなんです」と片山さんは、今進行中のプロジェクトについても語ってくださいました。

「ここから西濃・岐阜・東濃・中濃・飛騨と、県内5エリアを旅するように、それぞれの土地の魅力を詰め込んだ5つの味をつくるのが僕たちの夢です。次は山県市の『伊自良大実柿』を使ったクラフトコーラを試作中です」。

伊自良大実柿は、世界で唯一山県市で栽培されている、干柿に最適とされる渋柿。
ただ、一部木に実ったまま完熟することが稀にあり、甘く美味しく熟すにもかかわらず、廃棄されてしまっている、という現実がありました。

そんなレアな伊自良大実柿を使った、第二弾のコーラを現在試作中とのこと。
どれくらい収穫されるかもわからない、自然ありき、食材ありきの製法ですが、これも小さな製造所で「作れる分だけ作る」というスタイルだからこそできる方法。
自然を愛し、自然と共存していくことを大切にしている、3人らしい考え方が素敵です。

現在は、以前ご紹介した岐阜のクラフトビール、岐阜麦酒醸造さんとのコラボレーション企画も進行中とのこと。

土地の記憶を掬い上げ、この地に息づく歴史と文化を、こうして美味しく味わえるようにコトコト煮詰めて生まれたクラフトコーラ「ぎふコーラ」。

今後も各地の生産者さんと一緒に、新たな岐阜の魅力がぎゅっと詰まった瓶が2本、3本と並んでいくのが、とても楽しみです。


暮らしの一句

炭酸と土地の記憶のコーラかな 麻衣子

【季語解説】コーラ(夏)
夏は、ビールやアイスティーなど、冷たい飲みものがいくつか季語になっています。そのひとつに「清涼飲料水」があります。歳時記によって、季語「清涼飲料水」の捉え方はそれぞれ異なりますが、清涼飲料水の傍題(仲間の季語)として「コーラ」を季語としている歳時記もあります。
暑い夏、からからに乾いた喉を潤してくれる、救世主のような存在です。

ぎふコーラ
URL:https://www.gifucola.com/
Instagram:https://www.instagram.com/gifucola/

【ぎふコーラ取扱店】(取材協力・一部画像提供)
Natural Base(ナチュラルベース)
岐阜県岐阜市美殿町45
火・水曜定休、不定休あり
※営業日やランチの有無などは公式Instagramで最新情報を更新
https://www.instagram.com/naturalbase.gifu/



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