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「天然の鯛焼きで、冬を頬張る」 俳句と暮らす vol.03
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「天然の鯛焼きで、冬を頬張る」 俳句と暮らす vol.03

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ガチャン、ガチャン!と金属がぶつかり合う音。
もくもくと上がり続ける、どこか懐かしい匂いの白煙。
「こんにちは、お久しぶりですね!」と店主の元気な声。

私の大好きな景色です。
そしてやっぱり、この景色には冬が似合います。

今日、訪ねる季語は「鯛焼」。
岐阜の伊奈波神社参道にある鯛焼き屋「福丸」さんにやってきました。

一年中食べられる鯛焼きですが、実は「鯛焼」は冬の季語なんです。
ほくほくの餡がぎゅっと詰まった熱々の鯛焼き、確かに夏か冬かと問われれば、冬が似合いそうですよね。
そこに温かいお茶なんかあれば、もう最高。心も体も、芯から温まりそうです。

鯛焼きには「天然」と「養殖」がある


鯛焼きも、鮮魚と同じように「天然モノ」と「養殖モノ」があるのをご存知でしょうか。

素材の違いではなく、「焼く方法」で見分けられています。
ずらりと並んだ焼き型に生地を順に流して、一度に大量に焼き上げる鯛焼きを「養殖」、一本焼きと呼ばれる方法でひとつずつ焼いていく鯛焼きを「天然」と呼ぶそうです。

いわゆる「養殖」の鯛焼きは、今川焼のようにふわふわに焼き上げるものが多いのに対し、「天然」の鯛焼きは薄皮で、パリッと香ばしい焼き目が魅力。
焼き型に生地を仕込み、火床でガチャガチャと裏返しながら焼いていく昔ながらの一本焼きは、手間と時間がかかりますが、養殖の鯛焼きには真似のできない味わいです。

「福丸」は、パリッと香ばしい薄皮の鯛焼きが人気の、岐阜の鯛焼きの名店。
朗らかな店主、森 弘明さんが切り盛りする、まちの休息所のようなお店です。

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ずっと大好きな福丸の薄皮鯛焼き

2017年に、現在の善光寺駐車場内に移転した福丸さん。
その前は、岐阜市の美殿町商店街でお店を構えていらっしゃいました。
私の事務所からすぐの場所で、当時からよく通っていました。

余談ですが、自分の結婚パーティにも、福丸さんにお世話になりました。
私自身、ケーキカットの儀式がなんだか気恥ずかしくて、「いつも食べている大好きなものをみんなに振る舞いたい…」と、福丸さんにお願いして紅白の鯛焼きを特別につくっていただき、参列者に振る舞いました。
移転されたあとも、伊奈波神社へ行くときに必ず立ち寄るお店です。

今日も、福丸さんを訪ねる前に伊奈波神社へ。

003_04いなばさん

空気がすうっと澄んでいて、とても神聖な場所。
心がしゃきっと整います。

福丸さんに鯛焼きを買いにくるお客さんの中にも、鯛焼きを注文してから参拝し、帰りに受け取りに寄るひともとても多いそうです。


緑と風を感じる、青空プレハブで

伊奈波神社の参道にある、愛護山善光寺。
その善光寺の駐車場の脇に建つ小さなプレハブが「福丸」です。

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のれんをくぐって中に入ると、ほのかに甘い香り。
餡を炊きながら、鯛焼きを焼いているところでした。

お茶の無料サービスがあり、イートインスペースも併設。
参拝や散歩のついでにのんびり過ごされる方も多く、取材中もお客さんが途切れることがありませんでした。

丈夫な屋根こそありますが、窓のないつくりなので、外とそのままつながっているような気持ちの良い空間。
雄大な自然に抱かれた風格ある自社仏閣を眺めながら、ふうっとひと息つくことができます。

そう、私が求めている「冬の鯛焼き」って、こういう感じ。

暖房の効いたショッピングセンターのフードコートでも鯛焼きは買えますが、それではなんだかちょっと物足りないんです。
肌寒さとかすかな風を感じるところで腰かけて、温かいお茶をいただきながら、はふはふと熱々の鯛焼きを頬張る、これこそが「冬ならではの」鯛焼きの美味しさだと私は思います。

003_06お茶


北海道産小豆のほくほく自家製餡

大きな鍋でぐつぐつと炊いていたのは、鯛焼き用の餡でした。

北海道帯広産小豆を使用して、4〜5時間かけて毎日炊き上げる自家製餡。
小粒ながら、皮が薄くて柔らかいのが特長です。

003_07あんこ

森さんが「鯛焼きには、この小豆がちょうどいい」と話すように、じっくり炊き上げた滑らかな口当たりと、ホクホクとした小豆の粒感のバランスが抜群。
自然な甘さの餡と薄皮生地が、互いの良いところを引き立て合います。


一匹ずつ、直火でじっくり焼き上げる

一本焼きの特長は、なんと言っても昔ながらの焼き方。
鯛焼きを焼く鉄の道具「焼きゴテ」に生地を入れ、火床で直火にかけて焼いていきます。
くるくるとリズミカルにひっくり返しながら、均等に火が入るように焼いていくのはまさに職人技です。

003_08型_トリミング

焼きゴテの内側に油を塗り、そこに生地を流し入れます。
生地は小麦粉に米粉を混ぜたもの。米粉が入ることで、独特のもちもち食感に焼き上がります。その生地の上に餡を乗せ、さらに上から生地をかぶせてからカチンと挟みます。

型の大きさに対して、たっぷり入れた餡と生地。
挟む瞬間に、端からかすかに生地が溢れ出します。

実はこれ、生地をつい入れすぎたのではなく、わざと少しだけ溢れ出る量を入れています。
少し溢れた状態で焼き始めることで、外にはみ出した生地は直火で黒焦げに。
この黒焦げになった生地がくっついてくれることで、焼きゴテの隙間から熱が逃げることがなく、閉ざされた中で鯛焼きにしっかりと熱が回ります。
中はもちっ、外はパリッ、さらにフチの焦げたカリカリの部分が少し残って、全体的に絶妙なバランスの食感に焼き上げることができるのです。

003_09焼き

ずらりと並んだ焼きゴテを、ガチャン、ガチャンとリズム良く裏返しながら焼いていきます。

手間と時間がかかるのはもちろんですが、それに加えてこの作業、かなりの重労働なんです。
一本約2kgもある焼きゴテを試しに持たせてもらうと、想像以上のどっしり感…!
素人は片手ではうまく扱えないほどの重さで、軽やかそうに見える森さんの焼きゴテさばきに驚きます。

さて、そろそろ注文した鯛焼きが焼き上がりそうです。
はみ出した焦げの部分を削ぎ落としたら、いよいよ完成間近です。

焼きゴテをパカッと開けると、美味しそうな湯気が立ちのぼり、まるで一匹の魚が生まれるように、香ばしい鯛焼きが顔を出しました。

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いよいよ一匹、いただきます


さて、熱々の鯛焼きが一匹、焼き上がりました。

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皮が薄いので、ところどころ餡の黒っぽい色が透けて見えます。
鯛焼きを持った手から、焼きたて熱々の温度感が伝わってきます。

「熱いからやけどに気をつけてね」と森さんに言われていたにもかかわらず、豪快に頭から食べると、想像以上の熱さ…!(笑)
はふはふと口の中で転がしながら、続きをいただきます。

表面はパリッと香ばしく、中の生地は少しもっちりとした食感。
ほんの少し焦げたフチのあたりは、カリカリッと心地よい歯応えです。
小麦の優しい香りと米粉由来の自然な甘みがふわっと広がり、熱々の甘い餡と一緒に口の中は多幸感で満たされます。

火傷しそうになった一口目の頭から、最後の尻尾まで、ずっと熱々のまま完食。
「鯛焼きって、こんなにハフハフしながら食べるものだったっけ?」とつぶやくと、「一本焼きの鯛焼きは、一匹ずつ直火で焼くから餡までしっかり熱が入るんだよ」と、森さんが教えてくれました。

なるほど、確かに。
大量に焼く養殖の鯛焼きは、ずらりと並んだ型に生地を入れて、焼き上がった頃に餡を挟んでくっつけるのに対して、一本焼きの天然鯛焼きは、最初からずっと餡を中に閉じ込めて、熱を逃さないように焼き上げていきます。

炊きたての餡にゆっくり、じっくりと熱が入ることで、餡の芯まで熱々で、鯛焼き全体の味が引き締まるんですね。
食べ終わる頃には、外の寒さのことをすっかり忘れていました。

003_12割ったところ


目の前で焼き上がっていくライブ感

福丸には、鯛焼きの保温庫はありません。
「待たせてしまうけれど、ぜひ焼きたてを食べてほしくて」と、注文が入ってから一匹ずつ焼き上げます。

「はいよ、三匹ね」と、焼き始める森さん。
お茶を飲みながら、焼き上がるのを待っているお客さん。
もくもくと上がる煙を見ながら、焼き上がっていくライブ感にもワクワクします。

混雑する時間帯や、土日は待ち時間が出ることもあるので、事前に電話予約をするのがおすすめとのこと。
注文をしておいて、参拝や散策をしてから帰りに寄るとちょうどいいので、そんな人も多いそうです。


お団子とおしるこ、夏はかき氷も

鯛焼きの名店ながら、それ以外のメニューにも全力投球。
特に夏季限定のかき氷は、果肉がゴロゴロ入ったジューシーな味わいで、それがなんとワンコインで楽しめると、遠方からもわざわざお客さんが訪れ、行列になるほどの人気です。

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こちらは、岐阜県産ハツシモの玄米を贅沢に使い、生醤油で香ばしく焼き上げた「玄米だんご」。

焼きたては外はカリッ、中はふわふわの食感で、冷めるとさらにお米の甘さが引き立ちます。
熱々でも冷めても両方おいしい、福丸流の玄米だんごです。

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福丸の自家製餡をたっぷり味わいたいなら、おしるこがおすすめ。
焼きたての素焼きの団子を、お餅がわりにしていただきます。

鯛焼きをはじめ、どれもこれも本格的なおいしさながら、びっくりするほど低価格。
「どうせやるなら、いいものを使いたくて」と、あまり稼ぐ気のない森さんは笑います。

一日中焼きゴテをくるくるとひっくり返しながら、餡を炊きながら、笑顔でお客さんを迎えてくれる店主の森さん。
「来てくれた人を喜ばせたい」「ひと息ついていってほしい」というその気持ちこそが、訪れる人の心をやさしく温め、満たしてくれるのかもしれません。


暮らしの一句

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鯛焼を匹で数える店主かな 麻衣子

【季語解説】鯛焼(冬)
鯛焼のほか、今川焼や太鼓焼なども冬の季語。
素材に旬があるわけではなく、いつでも食べられるものですが、熱々の鯛焼を頬張るのはやっぱり冬が似合います。鯛のかたちのめでたさとノスタルジーな雰囲気が、凍てついた冬に、ささやかな明るさを呼び寄せてくれるような季語だと思います。
買い食い文化が発達した江戸時代から、今に至るまで、鯛焼は人気の「庶民のおやつ」。明治期以降、東京に暮らした多くの文豪も、作中に鯛焼きを登場させています。
薄皮鯛焼き 福丸
住所:岐阜県岐阜市伊奈波通1-8
TEL:080-6070-1388
営業時間:11:00~18:00
定休日:水・木曜日
価格:薄皮鯛焼き 1匹100円(季節限定鯛焼きは価格が異なる場合があります)、玄米だんご 1本100円、おしるこ(玄米だんご付き)1杯400円


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