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物語をさがして vol.21

見知らぬ場所に行って、枝ぶりのよい樹木やスケールの大きな巨木を見るとなぜかわかりませんが「おお!」と感動し、写真を撮りたくなってしまいます。樹齢は何年だろう、どんな景色を見てきたんだろう、いろいろと想像をかきたてられ、畏敬の念さえ感じてしまいます。

そんな大木は、神社や大きな公園によくみられるものという印象がありますが、名古屋の街中にも、推定樹齢千年と言われる木があるそうなんです。

今日は、松原緑地の大きなクスノキ(愛知県名古屋市中区松原1丁目3−11)にまつわるお話をご紹介します。

松原緑地のクスノキ

くすのきさんを見に行ってきました。
くすのきさんは、松原緑地(愛知県名古屋市中区松原1丁目3−11)にあります。元は古い城跡(日置城)のようです。

住宅やマンションが並ぶ街中にどーんと腰を据えておられました。

緑地がこんもりとした丘になっているため、いっそう大きく存在感があります。
すごい迫力だと思いませんか。
厳重な柵で囲われているため、近くに寄ることはできません。

立て看板にはこうあります。

この場所は古くから人々に「くすのきさん」と呼ばれ敬い親しまれてきました。
太平洋戦争の戦災により、幹の部分が焼けて枯れてしまいましたが、樹木の生命力の強さにより、根元からひこばえ(根元から出てきた芽のこと)が成長してみどり豊かな景観が再現されました。
このような貴重なみどりを残そうという地域住民の方々をはじめとする多くの方々の熱意により保存することになりました。
平成16年4月 名古屋市

(松原緑地 看板より)

奥の木が、焼けて朽ちてしまった木。
手前の木は新しく生えてきたもののようです。

奥の木には周りを取り囲むようにして石垣や、石段があります。
以前にはくすのきさんを神木として、空洞部分にお社が建てられていました。

くすのきさんの伐採計画の折に神社はなくなってしまったのだそうですが、
住民の熱意によりくすのきさんだけは残ってよかったと思います。

この石の台座の上にお社があったのでしょう。

台座を取り囲むくすのきさんを見てください。
前日の雨で、朽ちた幹がしっとりと黒く濡れていて、
今こうしている間にも朽ちつつある様子が見てとれます。
こんな根元では大きな枝葉を支えることは困難だと思われます。

電柱のような太い鉄の支柱が立てられ、大きなくすのきさんを支えています。

外に厳重な柵がある理由もわかる気がします。危険ですよね。
止められなければ、どうしても触れてすがりつきたくなってしまいそうです。

すぐそばを流れる堀川。日置橋からもくすのきさんがよく見えました。(写真左上)

くすのきさんには「弘法大師のお手植えだった」「織田信長が戦勝を祈った」などの言い伝えもあります。その真偽はわかりませんが、そうだったにちがいないと思わされる雰囲気を醸し出していました。

くすのきさんを出て、堀川沿いを歩いていくと、神社があり、そこでまたクスの巨木に出会いました。

びっくりしました。洲崎神社。(愛知県名古屋市中区栄1丁目31−25)

大学入試の時に宿泊先でもらったお守りがこの神社のものだったのです。
大学からは離れているのですが、この近くのビジネスホテルに宿泊する受験のパックツアーだったからでしょう。無事合格できたので、お礼参りしようにも遠いなあ・・・と思ったまま忘れてしまっていたので、30年ぶりにお礼参りに立ち寄ってきました。(取材のついでに、偶然だなんて・・・すみません)


御園のタブノキ

ここまで来たので、近くの街中巨木にも会いに行ってみます。
御園座の前の道をはさんでお向かいにおられる「御園のタブノキ」です。

看板によると、推定樹齢約250年、高さ10.0メートル 幹回り3・8メートル。

クスノキ科の植物ということなので葉っぱの感じはクスと似ていますが、クスよりも幹の表面がつるっとしています。枝ぶりが自由すぎて写真の四角にうまく収まってくれません。あちこちと勢いよく枝が飛び出していました。


東片端のクスノキ

そして、都会の巨木と言えば、やっぱり東片端のクスノキも外せないですよね。

名古屋高速の東片端料金所の手前にどん!と立っておられます。
通るとき、どうしても気になりますよね。
新聞記事などによると、推定樹齢350年といわれています。
さすがの風格!

そんなわけで、この日は名古屋の街中の大きな3本の木に会ってきました。
空気もすがすがしくはないし、根を張る地面にも恵まれていないのに、がんばって地上のわれわれを見守りながら生きていらっしゃる様子に、私も元気をいただくことができました。

みなさんのお近くにも素敵な巨木、ありませんか?

参考
『おかあさんが集めたなごやの民話』 ふるさとを訪ね民話を読む会
『愛知の巨木』中根洋治(風媒社)


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