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街を彩るディスプレイの世界 - BELIEVE IN LOVE –の裏側を覗き見する

花、暮らし、私 vol.23

朝晩の冷え込みが厳しくなってきたこのごろ。冬もすぐそこですね。

この時期は特に、街を歩くのが楽しくなります。
街路樹の落ち葉がこんもりと脇道に寄せられ、ふかふかの山となっているのです。

街中を歩いていても、少し彩度を落とした赤や黄色、茶色の落ち葉がそこかしこに。普段何も感じないようなコンクリートやブリックの味気ない道が、その音・匂い・感触・色によってとても可愛らしく彩られ、特別な道となるのです。何を隠そう、私は落ち葉がとにかく大好きなのです!

落ち葉さんぽを楽しむために、少しだけ早起きをして、電車ではなく徒歩で目的地まで。
いつもと違い、時間に余裕のある街歩き。落ち葉を楽しみながらも、ふと目線を上げると街のショーウィンドウなんかも目に入るようになりますね。これからの時期、クリスマスに向けてどんどんと彩られていくのも楽しみです。

さて、皆さんがショーウィンドウをご覧になるときはきっと、何気なく見上げた先の、マネキンが身につけている服や綺麗に飾られ配置されたバッグ、靴などを見て「可愛い」「かっこいい」「着てみたい!」と目を引かれるのではないでしょうか?

その、「何気なく目に入れてもらう」ための工夫が、ショーウィンドウにはたくさん詰まっていることをご存知ですか?

私のお仕事でもある店舗設計デザインと同じく、空間をつくるお仕事の中で、設計デザインとはまた少し異なる「VMD=ビジュアルマーチャンダイジング」という観点から専門性を持つ、ディスプレイデザインという業界があります。

百貨店のショーウィンドウなんかは特に、いかにそのブランドの商品の魅力をお客様に訴求するか、専門技術を元に、限られた空間に世界が作り込まれています。その世界観が、お店の中の各所にも続いていき、商品やブランドの魅力をさりげなく伝えているのです。

季節やその時のイベントに合わせて、ブランドの世界観を魅せていく。定期的に入れ替わる装飾によって、いつも飽きない新しさや知らなかった魅力を届けることができるディスプレイデザインのお仕事。

今日は、そんなディスプレイのお仕事をされている方にお話をお聞きしました。

百貨店、商業施設、専門店のウィンドウディスプレイやアートディレクションなど、国内外で多岐にわたって活躍されているH.Bee Planningの田尻尚美さんです。

実は田尻さん、皆さんにも馴染みのある、JR名古屋タカシマヤのクリスマス装飾を毎年担当されている方なんです!

今年も11月9日に、華やかなクリスマスの世界がお披露目となりました。

今回はこのクリスマス装飾の制作の裏側も含め、植物を扱われることもある田尻さんのお仕事のことを聞かせていただきました!


――田尻さん、宜しくお願いします!毎年のクリスマス装飾、このシーズンは私も楽しみに見ています。今年も多くの人が写真に納めようと人だかりができていました!装飾の準備はいつ頃から始まるのですか?

田尻:クリスマス装飾に関しては、実はほぼ一年を通してプロジェクトが進んでいます。この2年はコロナの為に海外に行けていないのですが、毎年、世界中をリサーチしてトレンドを探るところから始まり、コンセプトを立てて企画を作り込んでいます。

――クリスマスが終わったらまたすぐに翌年のクリスマスが始まるのですね。毎年の装飾はどのように発想しているのでしょうか?

田尻:まず、お客様がどのようなターゲットなのか?というところから掘り下げて考えます。
百貨店であれば、子供からご老人まで幅広い世代のお客様が楽しめるのはどんなものか?普遍的なものは何か?そこに、今年らしさやトレンド、新しさを取り入れて考えていきます。

それから、日常的に美術館や展覧会、国内外の展示会に足繁く通っています。ファッションやインテリアのトレンド分析や幅広いジャンルで業界問わず、普段から常にたくさんの物に触れ、インプットをしています。NYの百貨店やLAのインテリアデザインの会社での実務経験も発想につながるベースを作ってくれていると思いますね。

――今年のクリスマス装飾も見事でした!今年の見所はどんなところでしょうか?

田尻:サンタクロースって、世界で一番普遍的なものだと思うんです。子供からご老人まで誰が見ても幸せになる。第二次世界大戦中も、クリスマスの日には休戦したと言います。

クリスマスは、世界中誰もが温かい気持ちになる日。
コロナになり、戦争や経済の冷え込み、世界的に見ても色々な問題がある今だからこそ、この期間はみんなに温かい気持ちになってもらいたいと思っています。

それから、ディスプレイの仕事でいつも大切にしていることですが、細部まで世界を作り込むことが、人の心に届くと思っています。

11月8日のタカシマヤ営業終了後に設営をし、11月9日の朝にはディスプレイが出来上がり、クリスマスまでみなさんをお待ちしています。
タカシマヤのディスプレイでも、どの動物にもストーリーがあり、どこを見ても楽しんでもらえるように作り込んでいますので、是非ご覧くださいね!

――いつも見ていたあの装飾の裏側が知れてワクワクしました!クリスマス以外でも、田尻さんのお仕事が見られる場所はあるのでしょうか?

田尻:クリスマス以外でも、百貨店のショーウィンドウ、店舗やイベントの装飾などに携わっています。

普段のお仕事ではブランドやその商品の魅力を引き出す装飾を作り上げていくのですが、なるべく花や植物を提案に盛り込むようにしています。

専門的な話になるのですが、そもそも人はコンクリートジャングルで暮らすような体にはできていないので、いかに空間に植物を入れてなじませるか、気持ちが和んだり高揚したり、という作用に関わる「緑視率」を意識しています。

例えば最近、車のショールームの装飾のお仕事をしたのですが、ショールームの空間に植物の提案をしました。場所の制約や予算の制約などその場その場で違うのですが、その時の限られた範囲でいかに植物を入れるかを意識しています。植物を入れることで、空間に新鮮な空気が流れるような気がしています。

植物を使う中で注意していることは、その時の季節感が出せているか、そしてその植物がしっかりと商品を引き立てられているか。
私はフラワーデザイナーではなく、あくまでも商品を訴求する為のVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)の視点で空間を作っているので、商品のイメージ×植物のイメージが、掛け算となって相乗効果でブラッシュアップできるかということを大切にしています。

主役のイメージをサポートする為に、花や植物が交わり空間が作られていく、というような方法を取っています。

――普段のお買い物や生活の中で田尻さんのお仕事を拝見しているかもしれませんね!近年では、アーティストとコラボしたイベントやたくさんの人と交わるようなお仕事もされているようですが詳しく教えてもらえますか?

田尻:昨年の11月に開催した『FARMING TABLE』というイベントでは、飲食店・アーティスト・農家・企業とコラボしたパーティをリアルとオンラインのハイブリッドで開催しました。野菜をテーマにしたアートと食のトークショーで、レストランディナーとアーティストの作品を楽しみながら、愛知伝統野菜について知ることができるイベントとしました。

きっかけは、コロナで低迷していた飲食店に元気になってもらいたい!という気持ちもあり、少人数でもいいから何か、リアルで会って楽しいことをしたいという思いからでした。

当時、「野菜でアートコラージュするアーティストさん」「愛知の伝統野菜を広めたい人」や、「愛知伝統野菜を使ってカクテル作りをしている人」との関わりがありました。自分も愛知に住んでいることから、地元を応援したい気持ちもあり、自身で活動している『ヒト・コト・ユメを繋げる実行委員会』を通してイベントを企画しました。

初めはコロナで社会が低迷している気持ちを盛り上げたい気持ちから始まりましたが、企業も巻き込み、色々なカケラを集めて一つのイベントにしたのが『FARMING TABLE』でした。

――ブランドと人の間を繋げてきた田尻さんですが、さらに広い繋がりで世界を作っていかれるのですね。貴重なお話をありがとうございました!

タカシマヤクリスマスの装飾は12月25日まで。
今回は特別に、設営の様子も見学させてもらうことができました。
タカシマヤ営業終了後に始まる現場は、翌日のオープンまでに全てが完成しなくてはなりません。

人と荷物でごった返す現場の中、テキパキと指示をし装飾を作り上げていく田尻さん。

現場の作業スタッフに配られた資料には、田尻さんのお仕事を現すページが。

“神は細部に宿る“

細かい部分まで気を抜かず、誰もが楽しめる、愛せるクリスマスを創り出す。
そんな意気込みが感じられます。

出演者というのは、所狭しと運び込まれた世界中から集められたアニマルたち。
その一つ一つにストーリーがあり、細部まで作り込まれているそうです。あの大きな世界観は、小さなストーリーが集まってできているのですね。

今年の出番を待っていた、世界中から集まったアニマルたちが、思い思いのクリスマスを過ごす様子を、ぜひご覧になって見てください。

みなさんの心がクリスマスに向けて普段よりも少し、あたたまりますように。

『BELIEVE IN LOVE 』
2022 JR Nagoya Takashimaya Christmas
11.9 – 12.25
https://www.jr-takashimaya.co.jp/cp/2022christmas/

田尻 尚美 VMDプランナー・ディスプレイデザイナー
H.Bee Planning代表
https://naomitajiri.com/

12月には2つのウェビナーに登壇されます!

https://worldwidechiristmas2022.peatix.com/view
https://narumi-teaparty22.peatix.com/


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