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~有機ガーデニングで自然保護~“生きものを呼ぶ” ガーデニングのすすめ

ガーデンデザイナーの柵山です。自宅で花を育て愛でる行為が、地域の自然保護にも貢献していたら嬉しくありませんか?

ガーデニングは主に緑や季節の彩りの鑑賞や収穫が目的であり、主に人と植物の関係の間にあるものと考えられています。
そうしたガーデニングの中で多くの「虫」は敵であり、ガーデニングとは「植物と虫を上手に引き離すことだと思ってる方も多いのではないでしょうか。


ガーデニングは自然への入り口

少し目線を変えてみると、いつものガーデニングも違った見え方がしてくるかもしれません。それは「虫や植物の気持ちになってみる」という事です。

植物は、虫を始めとする生きものと共存関係にあります。全ての生きものは、その存在に意味を持ち、生態系という絶妙な調和で成り立っています。

植物はなんのために生きているのか?なんて考えたことは大抵無いと思いますが、、、植物は、健気に生命を次世代に繋ぐために受粉をし、タネをつくっています。それが、植物にとっての幸せなのだと仮に感じるのならば、その手助けをすることがガーデニングなのではないかと最近強く思うようになりました。人にとってのガーデングは、花と虫が巡り合うための裏方のサポート役という発想です。

ぜひ一度「お花を綺麗に咲かせよう」という目的を「お花を咲かせて蝶を呼んでみよう」という目的に変えてガーデニングをしてみてください。きっと植物に対する向き合い方に変化が生じ、新しい世界が見えてくるかもしれません。

ただし、自然は簡単に人間の思う様にはなりません。

以前、私は「アサギマダラ」という蝶を呼ぶために花を植えたのですが、毎日観察していても全く来てはくれませんでした。なんだか振られたような寂しさを感じました(笑)

近年減少していると言われているミツバチのために、蜜源として皆でひまわりの種まきをした事もあるのですが、種まきから2か月後、1匹のミツバチが開花したひまわりに訪花したのを発見した時、本当に感動しました。

その時のひまわりとミツバチ

みつばち一匹で涙が出そうになる。ガーデニングを通じて、そんな経験をしたのです。

花壇に綺麗な花が咲いていたとしても、気にせず通り過ぎてゆく人もいれば、立ち止まって眺めてゆく人もいます。ただ、そこにいるミツバチを観察している人はほとんどいないでしょう。ひょっとしたら、涙が出るほどの感動を多くの人が見逃しているのかもしれません。


当たり前でない日常の景色

このように目線を変えてみると、そこにいるミツバチは、当たり前ではないという事に気づきます。

例えば、アゲハチョウの成虫期間は、約2~3週間と言われていますから、当たり前のようにひらひらと飛んでいるその蝶との出会いは、凄い確率になりますね。その前に、その蝶は、自然界の中で、卵から僅かな確率で成虫になったのです。

今そこにある景色は、唯一無二の世界であることが分かってきますね。

 スカビオサという宿根草に訪れたナミアゲハ。

生きものの視点も取り入れたガーデングは、人の感受性を高め、心をより豊かにしてくれます。植物の生命力や、その繋がりに思いを馳せると、花や生きものの輝きが増すようですね。
花や生きものの発する色や形状は、種を子孫に残すための長年の進化の結果です。健気に生きることは、美を生むのかと思えてきます。

青いアガパンサスの花の上のナナホシテントウとアリ
リアトリスの花蜜を吸うキアゲハ
2匹のモンキチョウとバーベナの花  
エキナセアの花びらの上のアマガエル
葉に潜む茶色のカマキリ 
ケイトウの葉の上のオンブバッタ


生きものが好む植物を植えてみる


では、生きものを呼ぶにはどうすれば良いか? 簡単に説明しますね。

お花を植えれば、たくさんの虫がやってきます。
葉が茂れば、バッタやカマキリが生息し、土壌があれば、ダンゴムシやアリやミミズが住むようになります。ミツバチは特にシソ科のお花が好きですよ。ラベンダーやネペタやローズマリーなどなど。

フレンチラベンダーとミツバチ

蝶などは、種ごとにある程度棲み分けがされていますので、呼びたい蝶が好む品種を植えたりします。先述したアサギマダラという蝶は、フジバカマのお花の蜜が好きなのです。

フジバカマにやってきたアサギマダラ

蝶は、品種ごとに特定の植物に卵を産み付けます。

このオレンジ色の蝶 ツマグロヒョウモン は、スミレなどに卵を産み付けます。パンジーやビオラに春になると黒に赤い筋模様の毛虫が発生するのですが、皆さん、警戒して退治してしまいますが、こんなに綺麗な蝶になりますよ。

ルリタテハという蝶は、ホトトギスという宿根草の葉を食べで育ちます。

こちらも幼虫期間の見た目がグロテスクで嫌われてしまいます。
私も過去に、何の幼虫かも分らぬまま、殺虫剤をかけてしまった経験があります。

ハーブとしても人気のフェンネルには、アゲハチョウです。

レモンやサンショウも同じくアゲハチョウの幼虫の食草になりますので、、植物か虫かどちらを守るか悩ましいところです。私は、幼虫を他の株に移動させて、食べられてもいい株とそうでないものに分けたりしています。

今回ご紹介したものはほんの一例ですが、このように種類ごとに餌とする植物が違うため、植物品種数が多く自然環境が豊かなほど、多くの蝶の種類が見られることになるのです。


生命の繋がりをつくる「有機ガーデニング」のすすめ

こうした、生きものを意識したガーデニングをする上で、前提条件となるのが有機ガーデニングであるということです。
農薬をはじめとする化学薬品はなるべく使用しません。
例えば、葉を食べてしまう虫がいたとして、薬剤を使用したら、目的の虫は退治できたとしても、その周囲に隠れている生きものを全滅させてしまうことになりかねません。地域の環境貢献としてお花を植えても、それらが残留性の高い薬剤にまみれていたら、むしろ生態系を壊すことに繋がってしまいます。

土壌の起伏で、様々な環境を作り出したり、雑草地含め、多様な植生が重要となります。有機ガーデニングとは、自分の庭で小さな生態系を作り出してゆくようなことになります。それはまるで小宇宙をつくるようなものです。

いま世界では、猛烈なスピードで生物の種が絶滅しているといいます。これ自体はショッキングな事実ですが、私たちは悲観的だけになる必要はありません。日常の暮らしの中で楽しみながら植物を育てることで、それは自然に解決へ繋げることができるからです。
私たち一人ひとりが、生きものを呼ぶ有機ガーデニングを楽しめば良いのです。
今後ますます、各家庭で育てられる植物も地域の重要な自然の役割の一部だという考えが浸透してゆくと思います。ベランダのプランター1つでさえもです。 

有機ガーデニングはまだまだ様々な可能性を含んでいると思います。人を含め、あらゆる生命が生き生きと暮らす街や社会をつくる上でのノウハウがそこに詰まっている気がしてなりません。

あなたも始めてみませんか? 生きものを呼ぶガーデニング。

先ずは、ひとまず春を待ちましょう。


<補足>
※蝶やハチなどは、ポリネーター(花粉媒介者)と言われ、生態系の基盤となる植物にとって不可欠な存在です。人間の農業においてもなくてはならない生きものです。しかし、近年世界的にその数が減少し続けていることが問題になっています。
※2010年にCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)が開催された名古屋市では、生物多様性緑化を推進しています。「都心の生きもの復活事業」(名古屋市環境局) という取り組みも最近始まりました。オススメの植物品種のリストなどが掲載された、「なごやまちなか 生物多様性緑化 ガイドライン」がありますので、それを参考にして頂くのも良いかと思います。


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