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物語をさがして vol.03

本屋さんで書棚を眺めてぶらぶらするのが好きです。

探し物がない時でもそれはとても楽しい時間です。装丁の粋なデザインにハッとしてジャケ買いをしそうになったりしてしまったり。

気になるタイトルは今の自分の考えていることや行きたい方向を示してくれているようでちょっとした自己分析もできます。また、ベストセラーや平置きされている人気の本を見ているだけで、世の中の流れを感じられるような気がして、引きこもって制作ばかりしている自分の「化石化」防止策にもちょうどよいのではないかなとあれこれ言い訳をしながら時間の許す限りぶらつくのです。

書棚を見ていて思うのが、最近は猫ブームでもあるけれど、龍も人気があるなあ、ということです。猫は飼ったり道端で気軽に会えたり動画でも見られたりもしますが、龍となるとそう簡単にはいかないですよね。でも各地に龍をお祀りする神社は多くあり、尊い信仰の対象になっています。中日ドラゴンズ応援歌にも「遠い夜空にこだまする 竜の叫びを耳にして」とあります。いったいそれはどんな叫びなのでしょうか。龍とは、実在が不確かながら、なかなか興味深いシンボルのように思えてなりません。

そこで、今日は『岩崎誌』(岩崎誌編纂委員会)より、龍にまつわる民話をひとつご紹介したいと思います。


三ツ池から龍がのぼる


なんと、日進市には滝があるばかりか、龍伝説もあったのでした。


三ツ池散策~龍に会いに行く


三ツ池は、日進市岩崎町内にある三つのため池です。先回の記事でご紹介した「菊水の滝」(日進市竹の山町)の水源とされている池でもあります。

日進市内では子供が水遊びも楽しめる「野方三ツ池公園」がよく知られていますが、そことはまた別の場所です。

市内のため池地図(2012 日進市史 自然編【日進市内ため池地図】)を見ると、45のため池が記載されていますが、「三ツ池」が三か所もありました。「二ツ池」が一か所。「無名池」なんていうのも7つあります。なぜかよく分かりませんがドキドキします。7つの無名池に行って命名してみたいものです。7つの海を制覇するのは困難ですが池は全部市内ですし。

さて、民話の三ツ池はその名の通り、三ツ池上/三ツ池中/三ツ池下と三つあります。私は山の上の御岳神社参拝者駐車場から散策道を下って上から順に見ていくことにしました。

誰もいない道、途中で舗装はなくなり、車両は侵入できなくなります。
この日は買い物のついでに、思い付きで寄ってしまったので、ここにきていることは家族も誰も知りません。何かあって倒れてもすぐには見つからないかもしれないなあ。自宅から近い場所なのになあ。などと考えながら歩くのもスリリングで楽しいものです。

山を下りていくとだんだん地面の木の葉が湿って、水たまりとも乾いた池ともつかない湿地に変わり、ついに三ツ池(上)に到着しました。

暗かった山道が開けて明るく、水面がキラキラしてとてもきれいです。
これが、龍が舞い上った池かと想像すると不思議な感じがします。なくもなさそう、いや、きっとあるといった感じです。

三ツ池(上)

あの橋は渡っても大丈夫でしょうか。

・・・大丈夫、しっかりしていました。

橋を渡ると道があって、三ツ池(上)に沿って林の中を歩けます。
池の反対側、山の斜面が住宅街になっています。人の暮らしはありますが冬の朝、人通りもなく、とても静かです。水に住宅が映ってとてもきれいです。

三ツ池(上)

三ツ池(上)は長い形をしているようです。そして、三ツ池(中)のほうに続いています。
三ツ池(中)にいたるまでに、もうひとつ池がありました。(中の上)かな。
(上の下)かもしれない。

三ツ池(上)と(中)の間にある池

こちらが三ツ池(中)
どうでしょう。龍は居そうでしょうか?

三ツ池中

そして住宅街の道を挟んで、三ツ池(下)にたどり着きました。
三ツ池(下)の下はすぐ県道57号線。

三ツ池(下)

歩きながら気づいたのですが、山から下りるのではなく、下の道から入ってきたらこんなに歩かずにすぐに池を見られます。

でも、おかげで、山道を戻るときに、仮に自分が龍だったら、こっちに住むんじゃないかなという怪しげな、別の池を林の奥に発見しました。一度通り過ぎたのですがやっぱり気になって引き返してしまいました。池に通じる道がないので、草を踏み分けて少し近づいてみましたが、枯葉か湿地かだんだん怪しくなってきてちょっと遠巻きにしか写真が撮れませんでした。

ボートの浮かぶ謎の池

端っこに浮かぶ謎のボート・・・。そこへ行けば龍と交信ができるとか?でも二度と人間界に戻ってこられなくなるかもしれない。さっきの3つの池より断然ミステリアスな雰囲気です。 と、同時に長居してはならない予感もして、早々に立ち去ることにしました。

そして、帰宅して地図で確認すると、謎の池は、なんとなんと、ため池マップに載っている「無名池」のひとつでした。 ああ。こんなに早く無名池めぐりをスタートできるなんてとうれしくなり、勝手に池に命名しようと考えはじめたのですが、すぐに思いました。

仮に龍の住む池だとしたら、わたくしごときが勝手に命名するなんて恐れ多いと。

ですから、勝手に命名せずに、心の中でひっそりと「自分が龍だったら住みたいかもしれないボートの浮かぶ謎の池」というだけにとどめておこうと思います。


不動の滝


御岳山の中には、他に、いかにも不思議で龍が昇りそうな場所がありました。
整備された「あじさい遊歩道」をちょっと階段を下ったところにある「不動の滝」です。

不動の滝への降り口
不動の滝 

岩に囲まれ圧倒されます。不動明王も祀ってあります。

不動の滝 

わずかですが水が流れ、岩の間からも水がしたたり落ちてきます。

また、その近くには龍神を祀った石碑や、囲われたため池、井戸のようなものがあり、水がとてもきれいで印象的でした。

不動の滝近くの水場 

静かで神秘的な感じがします。


龍の体内時計


本記事のための参考にと、龍に関する本を読んでいると、こんなことが書いてありました。

「龍の体内時計」(『太平記』 巻第二十)
龍は、春夏の陽の気を得て猛威をふるいます。
そして、秋冬の陰の時期には、地中で蟠(わだかま)っておとなしくしているのです。

『龍の100の物語 あなたは龍を見たか』福井栄一 著 技報堂出版 より引用

室町時代の軍記物『太平記』が出典です。なるほど、そうだったのですね。出かけたのは2月半ば、雪の降った翌日ですから、龍は地中でお休みになられていたのでしょうか。岩崎の昔話のように、まだ山菜の出る初夏ごろになると、その姿を現すのかもしれませんね。


まとめのイラストマップ


そんなわけで、暖かくなってきたらまた三ツ池に出かけてみたいと思います。最後に、冒険のまとめをイラストマップにまとめてみました。

※小さいお子さん連れの場合などは特に気を付けて散策ください!



書いているうちに、なんだか近いうちに龍に会えそうな気がしてくるから不思議です。

ではまた!

参考
『岩崎誌』(岩崎誌編纂委員会)
『日進市史』(日進市史編集委員会)

『龍の100の物語 あなたは龍を見たか』福井栄一 著 技報堂出版
日本の古典文学の中から龍の目撃談を集めて現代文に訳した読み物。ほかの干支の動物の巻もあります。



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