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風のふくまま、庭ぐらし

風のふくまま、庭ぐらし vol 1 

はじめまして。
ガーデンデザイナーの柵山直之(さくやまなおゆき)と申します。

名古屋から三重県菰野町へ移住したのが、20年前。御在所岳の麓に庭を作り、そこで暮らしながら、菰野町と愛知県稲沢市の2拠点体制で主に東海地区で庭づくりをしています。

人と自然の距離がどんどん広がることに危機感を覚え、業務の傍ら、様々なガーデンプロジェクトを立ち上げ、庭の普及に取り組んでいます。今回から みたすくらすで「自然と触れ合うことの大切さや楽しみ方」を様々な角度から発信していきたいと思いますが、第1回目は私がどんな人間かをご紹介します。皆さんどうぞよろしくお願いいたします。


私が庭づくりを仕事にしたきっかけ

私は18の時、生まれ育った信州の松本市を出て、名古屋に進学しました。大学卒業後、大手の花卉小売企業に就職し、名古屋支店の配属となり、ありとあらゆる植物の事業に携わってきました。そして、毎日深夜まで働き詰めの日々が5年程経った頃、私の人生を変える出来事が訪れます。

イングリッシュガーデンとの出会いです。

仕事のストレスで帯状疱疹を発症した私は、休暇と視察を兼ねて、7日間の英国への庭巡りの旅に出ました。初めての英国。初めてのイングリッシュガーデン。その初日の1番目に足を踏み入れたガーデンがコッツウォルズ地方にある「バーンズレイハウス」でした。

そこで私の目に映った景色は、、、もう衝撃!

黄金色の花のトンネル・鮮やかなブルーの花の群生・三角屋根・草花が風に揺れるなだらかな丘と羊たち・芝にぽつんと置かれた古いベンチ。絵本の世界がそこに実在したのです。

撮影:柵山 バーンズリーハウスにて
ヒドコートマナーガーデンにて


なにかと 昔からロマンチストとか理想主義だとからかわれてきた私。
「やっていいんだよ」と。
心の奥にしまい込んでいた私の全てを肯定してくれたこの庭で、会社を辞める決意をしました。

まるで魂のふるさとに帰ってきたような感覚。
バーンズレイハウスの霊気漂うひんやりした静かな風と共に今でも鮮明に覚えています。

どんなに時間がかかってもいいから、日本で、こんな景色をつくってみたい。その後、名古屋で独立した後も毎年渡英を重ねました。

独立12年後に菰野町に土地を取得し、420坪の庭に少しずつ手を加えながら、現在に至ります。


絵本のような世界を具現化

子どもの頃、たくさんの絵本を大人に読んでもらいました。
たくさんのアニメをみて、その世界に夢中になりました。
世界は広くて素敵な風景がたくさんあって、それを謳歌するため早く大人になりたいと思って生きてきました。

しかし、大人になった今、思っていた世界と違うなと思う事がしばしば。

便利だけれども、、どこの町も同じような風景になり、安全に車が走行できる事を基準に計画されたグレー色の世界。ワクワクする小径や秘密の基地をつくったような藪は無くなってしまいました。

みなさんは “未来の風景“と言えば、どんな世界をイメージされますか?
多くの人が、高層ビルにチューブのような道路がぐるぐると浮いているような未来都市を思い描くのでは? そう!SFやマンガの世界ですね。
それもかっこいんですけどね。
人が思い描けるイメージが具現化してゆくのであれば、私は、花や緑がいっぱいの未来の風景を提案したいなと。

そこで、そんなイメージを多くの人に膨らませてもらうために、私が活動表現しているのが、ゲリラガーデンやガーデンイベントの開催です。
それがこちらの写真。

動く小さな庭“トラックガーデンプロジェクト”
トラックの荷台に庭をつくって、このまま道路を走るというゲリラガーデンイベントです。 

藤が丘から八草まで。リニモ列車3両を1日だけ緑化しちゃったこともあります。

このように。意外性のある植物飾りをすることで、どこでも緑化が可能であることを表現しています。
ワクワクしませんか?
これらは星が丘で今も実際に見ることができますよ。

この黄色い自転車は、星が丘テラスのスタバの横にあります!

こちらはノリタケの森にて。
花・緑・音楽・アートに囲まれたマルシェのある風景をつくっています。

 
花冠を配布し、植物を纏って過ごすフルールマルシェは、
星が丘テラスで5月と10月に定期開催しています。


この街が、大地が「庭」

多くの人が日頃から庭的な視点を持てたらいいなと思うんです。

「庭心」を育むことで、やさしい人や環境を育むことができるのではないかいう期待を持っています。

どんどん進み続ける効率化社会。
ちょっと、余裕が欲しいですよね。

道端に咲くかわいい雑草に足を止めてみる。
毎日歩いている駅前の大きな木の名を呼べたらいいな。
その木に花にどんな生き物がどんな時にやってくるのか、時計やカレンダー以外で、季節や時の経過を知る、そんな小さな気付きが、時間の流れを穏やかにしてくれるはず。

ご自宅に庭がなくても、街の街路樹、公園、道端には植物がいて、様々な生き物が共存しています。もちろん空や風も、その姿を日々変えています。
まずは、身の周りの草花や木々のざわめきを感じて欲しい。
そんな思いを込め、私の知る庭暮らし的日々の過ごし方を様々な切り口で紹介してゆきたいと思っております!

最後に、まだ完成半ばですが、私の住む菰野町の自宅の庭の風景です。

山脈から 鈴鹿おろし が思い切り吹き抜ける場所。
半分は自分の意図した通りに、半分は、植物や鳥任せ。
自然との共作と言えるようなワイルドな多年草中心の庭です。
またこの庭の紹介も、別の機会に是非。