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花と、私と、フランスの日々 ①

花、暮らし、私 vol.19

ジリジリと鋭く刺さるほどの日差し。眩しいくらいに青い空。
どこを見ても終わりのない、ベージュ色と緑のまるでテキスタイルのような畑の連なり。

今回の記事は日本から離れ、フランスからお届けしています。

ここはフランス南部、スペインにほど近いトゥールーズという街。
航空産業が盛んで、多くの雇用を生み出しているAIRBUSの本社があります。街の中心部は程よく栄えていて、多国籍の人種が住んでいるメトロポリタン。さほど広くなく、狭すぎず、少し離れるとすぐに田舎町が連なります。

大企業を抱え、中心部から少し離れると自然豊かな田舎町。その規模感からも、なんとなく、愛知県みたいだなぁと、勝手に親近感を持って街を眺めています。

今回私がフランスに来た目的は、自身で手掛けるinvisible flowerのプロモーションをパリで開催される展示会に出展するためだったのですが、パリの街での体験は次回の記事にまとめることにして、今回は私が見てきたフランスの田舎の風景についてまとめようと思います。


北から南を縦断!フランスの田舎を満喫


パリでの4日間の展示を終え、その後はリサーチに出たり観光したり。あっという間の1週間を過ごした後は、パリよりもさらに北部の街を転々と周り、ベルギー国境付近へ。そこから車で南下し、北部から南部のトゥールーズを訪れました。これは距離にすると1000km以上を移動したことになります。

滞在先はトゥールーズの中心部から車で数十分のところ、フォントニユという小さな田舎町。

“国によって、光の反射角などの理由で色の見え方が違う“というのを昔、インテリアの授業で勉強したのですが、フランスは本当に、色が素晴らしく美しいと感じます。

特に空の色。日中の青空も、暮れゆく頃の絶妙なフラミンゴカラーも、田舎にいるからこその満天の星空も、光があたった葉っぱのきらめきも格別。
とても貴重な日々を過ごすことができました。


夏のフランスといえば、この花!


フランスの南部は特に、ひまわりの栽培が盛んなのですが、滞在しているお家のすぐとなりも一面がひまわり。車で周りを走れば、そこかしこがひまわり畑で、黄色い地平線が見えるような場所も。
こちらに到着した頃がちょうど満開の頃で、良い時期に当たりました。

“ひまわりは太陽を追って花の向きを変える“というのは皆さんご存知かもしれませんが、これは成長期のひまわりのみ。開花して大きく開ききった花ではその成長も止まるので、そこから花の向きを変えることはありません。

まだ成長の止まっていないひまわりだけが、太陽に向かっている

収穫は9月頃。食用やひまわりオイル用に種を取るので、普段見ている切り花用のひまわり畑とは全く違う景色を見ることができます。
ついた頃、満開の状態で一心に同じ方向を向いた元気な姿だったひまわりも、収穫時期を間近に控え、人の顔よりも大きな花にたっぷり種を蓄えて、その重みで下向きになった状態で収穫期を待ちます。

全部のひまわりが同じ方向を向き、しかも下向きにうなだれているので、もしかしたら、初めての光景にギョッとされる方もいるかもしれません。

ただ、私はこの景色を見て、どこか前向きな強いエネルギーを感じます。きっと、『種』という存在が無数の可能性を感じさせる力を秘めているからかな、なんて、毎日少しずつ変わりゆくひまわり畑を散歩しながら眺めています。

ひまわり畑の間のあぜ道を進むと、小さな雑木林があり、さんさんと降り注ぐ陽の光とひまわりを楽しんだ後は少しひんやりとしたこの樹々の中を歩くのがお決まりの散歩コース。
日本では見たことのない、ヨーロッパナラの葉っぱがとても可愛いくて、お気に入りです。
小さなどんぐりの赤ちゃんがたくさんで、これまた可愛い!


ある時急に気になって調べたのですが、どんぐりって、ブナ科の実の総称なんです。日本ではコナラ、クヌギ、アベマキなどが広く分布していますが、このヨーロッパナラもブナ科。
ヨーロッパナラはインテリアではオーク材としてとても人気の樹種です。

パリの郊外でも、南部の田舎でも、日本で人気のレースフラワーが道端に自然に生えていたり、トゲトゲの実のような花でドライフラワーにもしやすいエリンジウムの赤ちゃんのと出会えたり!

海外に来ると、自生・園芸種に関わらず樹や植物が日本とは違うので、『どんな植物と出会えるか』もここ数年の海外の楽しみになっています。


植物目線で楽しむ、フランスの土地


北部から南部への移動も、車で長時間かけて来たからか、面白い発見がありました。

高速を走っていれば、日本ではおおよそどこを走っても、右を向けば山。左を向いても山。または海。

フランス北部にはとにかく広大な平野が広がっています。あっちを向いても農場。こっちを向いても農場。何時間走っても同じような景色がひたすら続きます。なだらかに盛り上がった丘に広がる畑の様子はまるでパッチワークのよう。これだけの広大な土地を切り開いて作物を作っているそのパワーのすごさに圧倒されます。

数時間かけて、南部に近づくと少しずつ山が見え始めます。そこからさらに進むと、山に生える植物が減り、岩肌が丸見えの山に変わります。トゥールーズは南西の街ですが、そこから南東へ向かうと、その岩肌がまた変化してオレンジ色に。

トゥールーズは『バラ色の街』と呼ばれているのですが、街中で統一された、オレンジピンクのレンガで造られた建物が所以。川の対岸から見ると美しいローズ色に見えるのです。街から少し離れた山を見て、それはこの土が作り出しているのだな、とわかります。

さらに東へ行けば岩肌はまた白く変化し、いわゆる“南フランス”というエリアになります。白い建物に海。マルセイユやサントロペなどの有名な港町もありますね。

こうして、フランスを広大な土地として引きで見て見ると、とても面白いです。気候や土が変われば、生えている植物も変わる。植物が変わると、景色も変わります。南フランスへ向かう道の高速道路の脇に、自生するスモークツリーがたわわに咲いている姿は、日本の景色からはなかなか想像できません。

とはいえ、日本には日本の素晴らしさがあり、やはり故郷の自然が一番しっくり来るのですが、“このあたりは日本でいうと〇〇みたいだな”、“日本の樹々が恋しい…”なんて、日々考えています。こうして海外を見ることで、日本のことをもっと深く見てみたいという気持ちも湧いてきます。

「気軽に海外へ」という世の中にはまだしばらく時間がかかりそうですが、それでも少しずつ改善の兆しは見えて来ているのかな、と感じる今回の渡仏。長期で滞在したからこそ見えたことがたくさんあります。

この記事では、北から南、それぞれのランドスケープを主軸にお送りしました。
次回の記事では、パリやトゥールーズ、南フランスの街中のお花に関してお届けします。


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