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「見えない花」 花、暮らし、私 vol.03

見えない花って、どんな花?透明な花?希少種??
と、思われた方もいるかもしれません。

今日は私が熱心に取り組んでいる「廃棄花(はいきばな)」の活動について、少しお話させてください。

始まりは、今から7、8年前。
通っていたフラワースクールの先生に、私はこう尋ねていました。

「お花屋さんで廃棄される花ってどのくらいあるんですか?」

なぜこの時こんなことを聞いたのかは覚えていないのですが、当時から花が捨てられることについて、気になっていたのは確かです。それから月日は経って、花市場での経験から、花の生産や流通のことまで幅広く興味を持つようになり、生産者さんや流通に携わる方、生花店の方、とにかく色んな方にお話を聞いて回りました。



一番初めに学んだ大切な価値観



普段、花仕事をする時に常に考えていることがあります。

どうしたら、この花たちを最高に美しく輝かせることができるか。
どうしたら、この花を受け取る人、贈る人の笑顔に寄り添えるか。

私たち花に携わる人間は、花の命を頂戴してお仕事をしています。
その命を戴くに値する仕事をしなければいけません。

これは花を学び始めた頃、私の尊敬する先生から戴いた大切な価値観でした。
この価値観が私の中ですくすくと成長し、今の私を支えてくれていると思います。


そんな思いを持ちながら花仕事をしていた私にとって、花業界の奥の方を覗くうちに、どうしても納得ができない事実に出会ってしまったのです。

それが、生産や流通の段階において、様々な理由で廃棄されてしまう花があるということでした。


規格外、奇形、病害虫、試験栽培、出荷調整…

もちろん、それぞれに理由があり、時にはどうしても廃棄が出てしまうことは理解できます。そして、生産者さんも流通に携わる方も、廃棄を出さないよう全力で努力されている事も、話を聞く中でわかってきました。

ただ、それはやっぱり人間の都合です。
目的があって人が生産した命が、理由はどうあれ、誰にも届くことなく捨てられている現状を知った時、「なんとかしたい」と思いました。

これが、私の廃棄花をなくす活動の始まりでした。

花屋にすら並ぶことなく、
誰にも知られず、
生まれては捨てられる花

「invisible flower(見えない花)」と名付け、この花を人の手に、心に届けることで、廃棄される花をなくしていく。そう決めて、廃棄される花を回収し、ものづくりを始めました。

透明でも、希少種でもない普通の花ですが今はまだ誰にも見えていないけれど、確実に存在している花たちです。

そしてなぜ「ものづくり」なのか?
ここにも様々な葛藤があるのですが、簡単にいうと花業界全体の既存価値を損なうことなく、新しい花の楽しみ方を提案したいと思っているからです。


届いた美しい廃棄花



廃棄予定の花を提供してくださっている会社様から、たくさんの花が届きました。

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廃棄といえど、普通に花屋さんで売られているような美しい花だらけ。

さて、この花たちで一体どんなものができるのか…試行錯誤が始まりました。


最初は草木染めをしてみたり、
乾燥させてみたり、
凍らせてみたり…

奮闘するも、なんだか納得できない。

そんな試行錯誤の末、たどり着いたのが手漉き和紙でした。

まずはやってみよう!ということで、工房の職人さんと相談しながら、まずは一枚、漉いてみました。
最初の一枚を漉いている最中、そして漉き上がった和紙を見て、思わず感動してしまいました。

廃棄花を使って何かできないか?と考え始めた頃、なんとなしに頭に浮かんでいた花の表情がそのまま表現できたのです。

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“廃棄花を使ったものづくり“で決めたこと

ものづくりをすると決めた時、大きなポイントとしてこれだけは絶対に曲げないと決めたルールがあります。

・花の美しさを伝えられるプロダクトであること
・作っている自分達がドキドキできるプロダクトであること

このルールを、想像以上に超えてくれた手漉き和紙という表現方法。
まずは第一弾として、この和紙を「花和紙」と名付け販売していこうと決めました。

もちろん、花によっては向き不向きがあります。
花の種類に合わせて、加工の調整や色柄の配分を決め、美しい花の表情をつくっていく…

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試行錯誤、試作に1年半かかって、

とうとう花和紙が完成しました。


ようやく販売開始



悩んでいたところで、伝統工芸と今をつなぐデザインユニット「ツグモノ」さんとご縁ができ、活動・販売のプロデュースをしていただけることに。2021年の3月から、ようやく花和紙の販売を開始することができました。

花和紙の使い方は「自由」です。
このまま額装して壁を飾ったりしてもいいですし、クラフト素材として使われる方や、アート作品の一部として使っていただいた方もいらっしゃいました。皆さま思い思いの形で楽しんでいただいています。

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その後もご朱印帳やアートパネルにして販売したりと、少しずつ展開が増え、マルシェや百貨店の催事に出店するなどお客様一人一人に活動の内容を知ってもらう機会も増えてきました。

表現としての花和紙

普段は商品として販売をしている花和紙ですが、活動を知ってくれた方から、またも嬉しいご縁をいただき、この秋にアート作品として展示をしていただける機会がありました。

2021年10月13日から10月26日まで開催された
『松坂屋410周年記念 ART SESSION』です。

館内のいたるところに総勢30名の作家の作品が点在し、アートの森を散策するように、百貨店の中で気軽にアートを楽しめるという素敵な企画。

そのメインブースであるオルガン広場に花和紙の作品を展示していただきました。

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普段作っている「商品としての花和紙」とはまた違う、新しい技法や表現にも挑戦した作品です。松坂屋さんの410年という時の流れをテーマにして制作しましたが、何より、普段私が感じている花に関する思いや葛藤、願い・・・花や自分と対峙して、いろんなものを出し切れた気がしています。

展示は大きな問題もなく無事終了。
お越しいただいた方から、たくさんの感想もいただけて、
中には「作品から、祈りを感じました」
とおっしゃってくださった方もいました。

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なにか、言葉にあらわせない、とても深いところで何かを感じ取ってくださったのが伝わってきて、とても印象的でした。

誰かの心に、ほんのすこしでも変化を起こせたのなら…
この活動にも意味はあったのだと、とても励まされた出来事でした。

今後もこの花和紙を通して、皆さんに花の美しさや楽しさをお伝えしていくと同時に、花和紙以外のものづくりにも挑戦したいと思っています。

目標は、花の廃棄をなくすこと。
廃棄されている花にも、価値があると伝えていくこと。

花和紙だけでそれは解決できないので、今後も試行錯誤を続けて行きます。

もし、どこかで見かけましたら気軽にお声がけください。
花への思いがこもりすぎて引かれるかもしれませんが(笑)、廃棄の花に限らず、広い意味で、たくさんの方に花の楽しさを伝えていきたいと思っています。

今回の廃棄花のお話は、invisible flower公式HPでも詳しく綴っています。
また、ツグモノのネットストアでも花和紙を販売しています。
興味を持っていただけたなら、こちらもあわせてご覧になってください。


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