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八事の静かな通りにある、花と過ごすリトリートカフェ

花、暮らし、私 vol.22

ちらほらと、紅く染まる木の葉に見惚れるこの時期。

昨年の今頃、空間デザインのお仕事で素敵なお花屋さんと密に打合せを重ねていたのを思い出します。

名古屋市 八事の静かな通りに、小さいながらも存在感を放つお店、【FLOWERS & RETREAT ENKI 】がオープンしたのは今年の初め。

「日常を忘れて、花と共に特別な隠れ家でくつろぐような空間にしたい」という、店主である前田さんの想いから、"リトリート"という名が冠されたアトリエ兼カフェです。

一枚板を分割したテーブルやオリジナルのハイスツール、テラスには暖炉の灯。随所にこだわった空間で、ひとときを贅沢に過ごすことができます

予約制のフラワーショップであり、カフェも併設するこのお店。
お花の当日販売はしていないのですが、カフェは営業日であれば、どなたでも気軽に利用することができます。

他のカフェとの圧倒的な違いは、カウンターで創り上げる前田さんの花仕事が見られること。デザイン性の高いアレンジがつくられていく姿を見ながら、いつもと違う、ライブ感のある店内で戴くコーヒーとカヌレが絶品です。

今回はそんなFLOWERS & RETREAT ENKIのオーナー前田さんにお話を伺ってきました!


無いものはつくる!企画する!

――― よろしくお願いします。さっそくですが、普段のお仕事ではどんなご依頼が多いのですか?

前田:個人や企業様からのご依頼でお祝いのお花をつくったり、お店やショールームなどで定期的にお花を入れ替えるお仕事も多いですね。ご縁あって高級車ブランドのショールームの定期装花も長年担当させていただいています。最近では花だけではなく、ブランドらしさを演出するオリジナル什器のプロデュースなどもしています。

ブランドのトレードマークとなるスピンドルグリルをイメージした什器。

前田:ショールームには、このスピンドルグリルをイメージした形のタイルや模様が随所に使われています。一流ブランドとして空間づくりも徹底してこだわり抜いているのに、花に関しては一般的な什器しか使われていなくて…。
「無いならつくりましょうよ!」と、企画を持ちかけて実現したのがこの什器です。
花を活けるのはもちろん、高さも2段階調節できるので植物や胡蝶蘭を入れたりと、空間の雰囲気を大きく変えることができるんですよ。

――― 私もお仕事でご一緒させていただきましたが、そういえば、このお店を作った時も前田さんの発想でどんどん空間が進化していったのを思い出します。スツールも「こういうのが欲しい」というのが市販では無くて、家具制作会社の方を巻き込んで、一からつくってしまいましたね!

前田:そうでしたね(笑) 普通の花やさんでは多分ここまではやらないと思うのですが、花をつくることだけが仕事では無く、そのブランドの魅力を引き出すことも大切なことだと考えています。


高級車を飾る500本の赤バラとシダの森

――― 最近のショールームでの展示について教えてください!

前田:新型モデルの発表とともに、現行モデルは販売を終了することになったのですが、この機会に何か特別なことをと、これまでにない企画を提案しました。現行モデルのショールームで最後の一台を花で飾り、今後さらなる進化を続ける新型モデルへと続く花道を飾る企画です。

――― 高級車の世界観と合っていてとても素敵ですね!今回使われたというオリジナル品種の花や植物について詳しく伺っても?

前田:ありがたいことに、花仲間でオリジナルのバラや植物をプロデュースしている方が協賛をしてくれたので、ブランドイメージに相応しい豪華な花道をつくることが出来ました。

ROSETIQUE JAPAN様からのご協賛で、日本各地の生産者様から『ルージュティーク』という赤いバラを送っていただけたんです。深みのある赤いバラは、少しウェーブがかった多くの花弁が特徴です。

また、海外希少品種のシダのセレクトブランドFERNtasTIQUE様からは、観葉植物をご協賛いただきました。こちらは11月から全国販売予定の新ブランドで、広島の野呂山にある自然豊かな環境で育てられたもの。葉ツヤもよく、生き生きとした表情をしています。
今回のご協賛に加え、アドバイスやサポート、施工についてもご尽力くださり、本当に感謝しています。

――― お花やさんとは思えない企画力と実行力に脱帽です!

前田:先ほどの什器と同じで、ショールームやブランドがより良くなることを目指しているので、それが必然的に相手にとってメリットがあることになっているのだと思います。その上で自分がやりたいことを実現するために動いています。今回のような機会をいただいたショールーム様にも感謝しています。


【FLOWERS & RETREAT ENKI 】について

――― このお店ができるまではアトリエで会員制の花屋として運営されていたそうですが、いま、オープンな店舗があるという事にどんな意味を感じていますか?

前田:色々な人が来て直接話が聞けるというのはやっぱりいいですね。「ここにこれば前田に会える」と言って来てくれる友人もいれば、見ず知らずの方から新しい話が聞ける。もともと人に興味があって、人とのコミュニケーションのツールとして花に携わっている部分もあります。僕にとって、いろんなきっかけをくれるのが花なんです。こちらのお店は『恩贈り、花贈り』がテーマでもあります。

――― お店にはどんな人に来てもらいたいですか?

前田:癒しを求めている人に来てもらいたいですね。日々忙しくても、ここにきて、花や植物に癒されてほしいです。その為のリトリートですから。

それから、お店にある観葉植物たちにとっては二酸化炭素がご馳走なので、人がいっぱい来てくれた方が植物も元気になるんです(笑)。なので、気軽に立ち寄ってくださいね。

――― お忙しい中いろいろお話しを聞かせていただきありがとうございました!

お店ではこだわりの器で飲むコーヒーやティーラテ、美味しいカヌレが楽しめる他、観葉植物や花器などの購入もできます。
ENKIさんの代表作である、プリザーブドフラワーを縁起のいい格子の桐箱に詰め込んだギフトボックスも店頭販売中。

生花は予約しないと買えませんが、手土産にカヌレ、ギフトに使えるアイテムもありますので、ちょっとお茶ついでに立ち寄ってみてください!


花を贈る人

前田さんから出た『恩贈り、花贈り』というテーマを聞いて感じたのは、私の中でも前田さんは『花を贈る人』だということです。

思い出すのは、このお店のオープン前。訪れてみると工事中の現場に、これまでどの現場でも見たことのない光景がありました。

連日、何人もの職人さんが出入りする工事現場。その一画、誰にも邪魔にならない出窓の隅に佇む美しいお花。

「職人さん達の気分が少しでも良くなるように」と、前田さんが活けたものでした。

また、別の日のこと。
日が暮れた帰宅時間。お店の前のバス停でバスを待つ人たちに、前田さんはお仕事で余ったお花でつくったブーケをプレゼントされていました。かっこつけずに、目の前の人のために花贈りができてしまう人なのです。

そんな前田さんの人柄もあってか、お店づくりにおいては、職人さん、材木屋さん、家具の制作会社さんに器屋さん、学生さんまで、本当に色々な人がプロジェクトにいい意味で巻き込まれていました。そして集まった人がそれぞれのパートでお店づくりのために力を発揮していくという流れが出来ていきました。

私自身もその一人。
私と前田さんを繋げてくれたのも、花でした。

花を贈ること、もらうことって、いろんな意味を考えてしまいがちだけど、もっと、自然に、気軽にやってみてもいいことだと思うのです。

“お疲れさま。明日も頑張ろう”とか、“今日のあれ、ありがとう!”とか。
そんな一言に添える一輪が、相手の心にどのように届くかを考えるのも、豊かな暮らしにつながりそうですね。

FLOWERS & RETREAT ENKI
Instagram: https://www.instagram.com/flowers_retreat_enki/
Atelier ENKI
https://flowerdesign-enki.com/


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