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「カジュアル茶道のススメ」 伝統は今を生きる vol.09


こんにちは。フォトグラファーのたかつです。
今回のテーマは「お茶」。
緑茶でも甘いグリーンティーでもなく、お抹茶。千利休が世に広めた茶道文化に少しだけ触れてみたいと思います。

僕の母親は茶道を少々嗜んでおり、幼いころから意外とお抹茶は身近にありました。もちろん飲む機会もあったので何度か口にはしたのですが、その頃は正直あの味が苦手でした。「美味しいと言っている人はカッコつけているだけなんじゃないか」そう思ってさえいました。生意気な子どもですね(笑)
それに母が言う「作法」というのが、全く理解できませんでした。
なので僕は幼いころ、どちらかと言えばお抹茶や茶道というものを敬遠していました。


お抹茶への目覚め 〜丈山苑との出会い


フォトグラファーとして活動しはじめてから、しばらくのことです。
拠点にしている地元のことをもっと知りたいと、カメラ片手に安城市の様々なスポットを巡っていた時に、『丈山苑(じょうざんえん)』という日本庭園があることを知り訪れてみました。
丈山苑の由来になっている石川丈山は、現在の安城市泉町生まれ。190cmもある大柄な武将でしたが、のちに文人として才能を開花させた人と言われています。江戸初期における漢詩の代表的な人物で、儒学・書道・茶道・庭園設計にも精通していた人のようです。
終の棲家として京都に『詩仙堂』を建て、当時としては長寿の90歳で亡くなります。

この丈山苑は詩仙堂のイメージを生誕地の安城市に再現したもので、本格的な和風庭園と書院を気軽に味わえるスポットになっています。


建物や日本庭園の撮影を一通り終え、ふと目についたのが、苑内で食べられるお抹茶と和菓子のセットでした。
この庭園にお抹茶と和菓子はきっと映える。そう思い、注文しました。

―――美味しい。

昔はそれほど好きでなかったお抹茶が、大人になってから味わったら不思議と美味しく感じたのです。それ以降、僕はときどき外でお抹茶を楽しむようになりました。


久しぶりに丈山苑へ


そんな僕のお抹茶嫌いを払拭してくれた丈山苑へ、久しぶりに訪れてみました。相変わらず素敵なところです。


受付で入園料と呈茶料を払うのですが、合計で350円。
期間限定の「お抹茶+和菓子+栗ぜんざい+ほうじ茶セット」があったので、それを注文しました。これも700円とリーズナブルな価格です。

手入れの行き届いた日本庭園を眺めていると、お目当てのお抹茶セットが運ばれてきました。
素晴らしい景色に、美味しいお菓子とお抹茶。これが数百円で楽しめてしまうのは、なんだか申し訳ない気持ちです。


素人でもお抹茶を点てられるのか?


丈山苑で癒しのひとときを過ごした帰りの道中、ふとこんなことを思いました。

自宅でもお抹茶を飲めないものか?

作法についての知識はなく、お抹茶を自分で点てようなんて考えたこともありませんでしたが、お抹茶の粉と器と、あのシャカシャカ混ぜる道具さえあれば、意外と簡単にできるのではないか?そう思い立って実践してみました。いわば「カジュアル茶道」です。


まずは、道具を揃えましょう。
シャカシャカ混ぜる道具は、茶筅(ちゃせん)と言うのですね。
ネットで調べると様々な茶筅が見つかりましたが、今回はカジュアルにお抹茶をいただくことが目標ですので、ホームセンターで見つけた2000円の茶筅を購入しました。

次に器、抹茶碗です。

器にはこだわりたいなと、今回は愛知県刈谷市の陶芸家 徳竹秀美さんの抹茶碗を用意しました。抹茶碗の固定概念を覆す、ポップでカラフルな作品です。海外でも活躍されている徳竹さんの作品に興味がおありの方は、こちらから是非ご確認ください。


http://www.hidemitokutake.com/

そして抹茶粉とお抹茶をすくう茶杓(ちゃしゃく)は、スタジオの近くにあるお茶屋さん「稲垣茶舗」で購入しました。

抹茶粉は初心者向けの30g1600円程度のものにしました。
ちなみに抹茶粉は緑茶などの茶葉を粉にしたわけではなく、碾茶(てんちゃ)という品種の茶葉を石臼または微細粉砕機で挽いたものを言うそうです。


茶杓は「フシが入っているものが渋い」とネットに書いてあったので、500円程度のものを購入しました。

このフシが「侘び寂び」なんですね。

ついでにお抹茶を点てたことがないと店主に伝えてみたところ、親切に色々と教えていただけました。あまりにも親切だったので、心の中で勝手に「師匠」と呼ばせていただきます。

師匠、いろいろと教えてくださりありがとうございました。




心穏やかなお抹茶タイム


スタジオに到着後、お抹茶をさっそく点ててみました。師匠に教わったやり方を丁寧に再現します。

①茶筅をまずは濡らしておきます。

②次に抹茶粉を茶杓2杯。意外と山盛りです。

③茶杓でお抹茶を崩し、70〜90℃のお湯を約60ml入れます。

④茶筅で抹茶碗の底に溜まった抹茶粉を混ぜてダマを無くします。

⑤ダマがなくなったら空気を巻き込むイメージで小刻みに茶筅を動かします。イメージとしては「川」の字を書くようにします。

⑥きめ細やかな泡が立ったら完成です。最後に「の」の字を書くように茶筅を動かして抹茶碗の中央で茶筅を引き上げます。

写真では細かな泡ができていますが、実はこれは2杯目。1杯目はまったく泡が立ちませんでした。

師匠はこうも言っていました。
「心穏やかでなければ、綺麗に泡が立たないです」
恐らくこのとき、私の心は緊張で乱れていたのでしょう。


それでは…早速、自分で点てたお抹茶をいただいてみます。

うん、美味しい!
まだまだお湯の量や点て方は試行錯誤が必要かもしれませんが、味や香りは意外といけました。「カジュアルお抹茶」は大成功としておきましょう!

LiE RECORDS(vol.08参照)さんで購入したレコードを聴きながら、自分で点てたお抹茶をいただく…令和版「侘寂の楽しみ方」になりました。

お茶菓子は大好きなルマンド。和洋折衷ですが、味の相性も悪くなかったです。


お抹茶は意外と気軽に楽しめる


「茶道」と言うとどうしても堅苦しいイメージがありますが、一度道具さえ用意すれば、こうやってカジュアルにお抹茶を楽しめます。作法やルールに縛られず、伝統文化を気軽に暮らしに取り込んでみる。こういう人が増えれば、伝統はずっと残っていくのではないでしょうか。皆さんも是非「カジュアル茶道」を試してみてください!



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